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メルテザッカーの引退試合に思う
ドイツ代表の苦戦と問題の根本。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byUniphoto press
posted2018/10/21 08:00
ドイツ代表、アーセナルなどで活躍したメルテザッカー。彼の引退はドイツの一時代の終わりを象徴する。
オランダに0-3でパブは沈黙。
ふたりのお子さんにも恵まれた彼は、ハノーファーやドイツ国内で社会的に恵まれない子供たちの支援をするために『ペア・メルテザッカー財団』を設立してボランティア活動を行っていますし、今後はアーセナルのアカデミー組織の指導者として育成年代の強化に携わる予定とのこと。
素晴らしい引退試合を観戦した後、僕と友人は市内のパブでUEFAネーションズリーグのオランダvs.ドイツをテレビ観戦したのですが、ドイツ人は酷い試合を見せられると無言になるのです。ファンダイク(リバプール)に先制ヘッドを決められた際は店内がシーン……。
ただ、後半に入るとドイツが巻き返してワンサイドゲームへ。しかし決定機をことごとく外し、カウンターからデパイ(リヨン)とワイナルドゥム(リバプール)にゴールを許して0-3の大敗を喫したのでした。
シーン……。いや、もう飲もう、ビールを飲もう!
きっと何かの間違いなのでしょう。昼間にメルテザッカーさんとその仲間たちが築いた栄光の数々に感銘を受けていた僕は、その落差に愕然。4年前に世界を制したドイツが今、こんな暗闇に迷い込むなんて。
ドイツは正真正銘の危機。
3日後、敵地スタッド・ド・フランスでのUEFAネーションズリーグ・フランス戦でも、グリーズマン(アトレティコ・マドリー)に2発を浴びて1-2で敗戦。1分2敗となったドイツ代表は、正真正銘の危機に陥っています。
ドイツのサッカーファンが暗澹とした心持ちで過ごしているのは、ここ数年続いていた栄華が崩れ去ってしまったのでは、という不安からだと思います。予兆はありました。
今年3月の親善試合でスペインに引き分け、ホームでブラジルに7-1で勝利した4年前の借りを返されたあたりからでしょうか。当時のドイツ国内はまだ楽観ムードで、ロシアワールドカップ開幕直前にオーストリアに敗れ、続くサウジアラビア戦で辛くも勝利して本大会に乗り込んだ時点でも平静さは保たれていました。
しかし、本大会ではグループリーグ初戦でメキシコに敗戦。スウェーデンには勝利したものの、最終戦で韓国に完敗して80年ぶりのグループリーグ敗退を喫してしまいました。