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ルメールの判断、度胸、運は段違い。
4戦目の馬で菊花賞制覇の名手ぶり。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2018/10/22 11:20
デムーロとの息詰まる直線勝負。最後に制したのは鞍上ルメールのフィエールマンだった。
ミルコに負けたと思ったが。
スローの瞬発力勝負になると、どの馬にも余力がある。そのため、ヨレたり、下がったりする馬が少なくなり、馬群に隙間ができづらくなるのだ。
ラスト300mほどでエタリオウが馬場の真ん中から体ひとつ抜け出した。追いすがるブラストワンピースはジリジリ離されていく。
勝負あったと思われたそのとき、内からフィエールマンが凄まじい脚で伸びてきた。前の馬が内にもたれて生じたスペースを、一気に駆け抜けてきたのだ。
内のフィエールマンか、外のエタリオウか。2頭が鼻面を揃えてゴールを駆け抜けた。
ルメールのフィエールマンが、ハナ差だけ前に出ていた。
「負けたと思った。ミルコに『おめでとう』と言ってしまった。ぼくの馬は切れ味があり、いい瞬発力を発揮してくれた」
コース取りの判断と度胸。
ラスト3ハロンは最速タイの33秒9。同じ上がりで、2着のエタリオウ、3着に来た武豊のユーキャンスマイル、5着のグローリーヴェイズ、7着のシャルドネゴールドもラスト3ハロンを33秒9でまとめている。ということは、勝負どころから直線入口にかけての位置取りや、ロスのないコースを通ることができたかどうかが勝敗を分けたと言える。
道中は先行集団から差のない中団につけた読み。直線入口で進路があくのを「ちょっとガマン」した判断と度胸。そして、前の馬がヨレてスペースができた運――今のルメールは、それらすべてが冴えまくっている。
逃げたジェネラーレウーノはフィエールマンから1秒遅れた9着。確かに自分に有利な展開に持ち込んだのだが、同時に、差のない中団にいた馬たちをも利する結果となってしまった。
キタサンブラックのように、道中もっとペースを上げ、自分も苦しいが後ろはもっと苦しくなる展開に持ち込んだらどうなったか見たかった気もするが、直線半ばまで上位争いをするなど、力を示すことはできた。近くで競馬をしていた皐月賞馬エポカドーロは8着。ここは距離が長かったか。