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錦織圭は決勝8連敗でも勝負強い?
ランク急上昇の謎をデータで究明。
text by
今田望未Nozomi Imada
photograph byHiromasa Mano
posted2018/10/17 11:20
マスターズ制覇をあと一歩で逃している錦織だが、気づけばトップ10間近。やはり世界的な実力者なのだ。
注目すべきはタイブレーク。
今シーズンのサービスゲームのキープ率は81%。大不振だった2017年も同じく81%だった。
サーブがよくないならリターンがよかったのか、と考えてしまうが、今シーズンのリターンゲームのブレーク率は25%。これはなんと2012年以降で最低タイの数字だ。トップ20になんとか入っていた時の数字よりも低い。
テニスにはサービスゲームとリターンゲームしかないのに、それでは一体どうやって勝っているのだろうか? 実はもう1つのゲームがある。それがタイブレークだ。
先週のロジャー・フェデラーとの試合の第2セットで落とすまで、錦織は5月からおよそ5カ月間にタイブレーク12連勝を記録した。これはもちろん自身最高の記録だ。
本来タイブレークは、サーブで楽にポイントを取れるビッグサーバーのほうが勝率が高くなる傾向があり、現役選手ではジョン・イズナー(アメリカ)、ミロス・ラオニッチ(カナダ)らが勝率上位に名を連ねている。
一方でBIG4の勝率も高く、ロジャー・フェデラーはある程度試合数をこなした現役選手の中で1位。他の3人も全員60%以上の勝率を誇っている。
全米チリッチ戦の勝利が象徴的。
今回の錦織の12連勝は内容的には後者に近い。連勝中のプレーは目を見張るものがあり、セットポイントから挽回するシーンなど、これといった一発のプレーではなく、地力による連勝劇だった。
また、タイブレーク12連勝中の試合は、すべて錦織が勝利している。この中にはタイブレークを落としていれば負けていたであろう試合が数多く含まれている。
象徴的なのはやはり全米オープン準々決勝、チリッチ戦第3セットのタイブレークだろう。チリッチの連続ダブルフォルトにつけ込んで最後はリターンエース。セットカウント2-1として、勝利を大きく手繰り寄せた。
さらに面白いデータがある。錦織の今シーズンの勝敗はここまで36勝17敗だ。同時期でのシーズン勝敗は2014年が49勝11敗、2015年が52勝13敗、2016年が52勝16敗。なんと10勝以上も少ないが、この3年間と同様に最終戦争いをしているのだ。