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『ウィンブルドン』
観客になった気持ちで楽しめる、
40年前の傑作テニスサスペンス。 

text by

近藤史恵

近藤史恵Fumie Kondo

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photograph bySports Graphic Number

posted2018/10/22 07:00

『ウィンブルドン』観客になった気持ちで楽しめる、40年前の傑作テニスサスペンス。<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

『ウィンブルドン』ラッセル・ブラッドン著 池央耿訳 創元推理文庫 1100円+税

 40年前に書かれた東西冷戦時代のテニスサスペンスで、近年復刊された一冊なのだが、これが抜群におもしろいのだ。少しも古さを感じない。

 まずキャラクターが魅力的だ。主人公はふたりのプロテニス選手、23歳のオーストラリア人キングと、ソ連から亡命した17歳のツァラプキン。ボールを追って怪我をすることも厭わない情熱と強い正義感を持つキング、亜麻色の髪をした美男のツァラプキンは、天才的なテニスプレイヤーでありながら、勝利よりもテニスを楽しむこと、美しいテニスをすることにこだわる。

 オーストラリアとソ連というふたつの国の間にある壁や、ことばの壁を越えて、ふたりが出会い、親友となる。ダブルスを組むことで、向かうところ敵なしと言われるようになる。一方で、シングルスでは、お互いはライバル同士なのだが、ツァラプキンはその、潔すぎるテニスのせいで、キングに勝つことはできない。だが、少年のように素直で清廉なツァラプキンは、人気プレイヤーとなり、多くのファンから応援される。

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