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忘れられた逸材司令塔バークリー。
サッリのチェルシーでついに開花。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byUniphoto press

posted2018/10/12 07:30

忘れられた逸材司令塔バークリー。サッリのチェルシーでついに開花。<Number Web> photograph by Uniphoto press

能動的なスタイルを築き上げるサッリのもと、バークリーがついに司令塔としてのポテンシャルを発揮している。

23億円弱の移籍金は期待薄?

 時を同じくしてエバートンではロベルト・マルティネス(現ベルギー代表)からロナルド・クーマン(現オランダ代表)へ監督が代わった。バークリーの魅力を「ガスコイン+(ミヒャエル・)バラック」と表現していたマルティネスはミスに寛大だったが、クーマンはより現実直視タイプの監督だった。

 代表落ちによる自信低下もあっただろうが、'16年9月のサンダーランド戦で、ロストボールを連発してハーフタイム中に交代を命じられたバークリーの姿は、悪い意味で強烈な印象を残した。

 エバートンの監督がクーマンからアラダイスとなった2017-18シーズン、バークリーのチェルシー加入はステップアップを期す本人の意思によるものだった。

 だが「ガッザ2世」としての期待が薄れていた事実は、1500万ポンド(23億円弱)の移籍金が物語る。

 ハムストリングの怪我による長期欠場明けだったとはいえ、まだ24歳のイングランド人MFとしては廉価と言ってもよい。バークリー獲得の4カ月前には、その2倍以上の金額が控えボランチ扱いのダニー・ドリンクウォーター獲得に費やされているのが、プレミアにおける「国産プレミアム」の現状なのだから。

コンテは即戦力とみなさず。

 事実、チェルシーのアントニオ・コンテ監督(当時)は、バークリーを即戦力と認識していなかった。昨季後半戦は4試合出場のみ。先発起用された2試合でもフル出場はならなかった。また、ファンにも国産の逸材を手に入れたという興奮は見られなかった。

 かくいう筆者も、エバートンからバークリーを買うぐらいなら、現役当時のバラックを彷彿させるユース出身で、レンタル先のクリスタル・パレスで主力となったルーベン・ロフタス・チークを育成してもらいたいと感じたほどだ。

 しかし、捨てる神あれば拾う神あり。

 フロントと確執のあったコンテがチームを去り、マウリツィオ・サッリが後任となった。それがバークリーの乗っていたレールが復活路線へと切り替わったのである。

 いや、入団直後の戦線離脱中にも「前向きな精神状態を心掛けて、回復後の鍛錬と節制で成長することだけを意識してきた」と語っていた本人から見れば、努力が報われたのかもしれない。

【次ページ】 セスクらを上回る万能タイプ。

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