濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
再戦は慎重に……。那須川vs.堀口、
“世紀の他流試合”の緊張感と余波。
posted2018/10/10 10:30
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Susumu Nagao
“世紀の一戦”を制した男の出で立ちは、スーツにサンダルだった。「RIZIN.13」(9月30日、さいたまスーパーアリーナ)一夜明け会見での那須川天心である。
この大会で、デビュー以来無敗の“神童”那須川はMMAの世界的強豪、堀口恭司と対戦した。ルールは3分3ラウンドのキックボクシング。堀口はこれが初のキックルールだが、MMAでも伝統派空手をベースとした打撃を武器にしている。
パンチ、蹴りしか使えないルールでも、堀口はめっぽう強いだろうと容易に想像できた。むしろ幅の狭いルールで対戦することで、MMAとは違う“他流試合”“異種格闘技戦”としての妙味が生まれたとも言える。
簡単に言えば、想像力を刺激してくれるのだ。
打撃だけの堀口はどれだけ強いのか。それは那須川をも凌駕するほどなのか。キックボクシングの“最高傑作”の1つが負ける場面を見てしまっていいのか。
とはいえ堀口が負けるのも、今や“事件”だ。
“現在進行形の伝説”が激突!
大会チケットは売れに売れ、増席を繰り返した。27208人の観客数はRIZIN旗揚げ以来最高。PRIDE全盛期の数字に戻ってきたとも言えるが、もちろん観客にはPRIDEを知らない世代、那須川や堀口やRENAが掘り起こしてきた若いファンも多かった。
いわばこの試合は“現在進行形の伝説”がぶつかり合うもの。「歴史の証人になるために」と言ってしまうとものほしげな感じもするが、そういう気持ちがなかったと言うのもまた嘘になる。