濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
再戦は慎重に……。那須川vs.堀口、
“世紀の他流試合”の緊張感と余波。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2018/10/10 10:30
時代を超えて語り継がれる名勝負となった那須川vs.堀口。果たしてリマッチはあるのか……。
台風で揺れた当日のスケジュール。
加えて試合当日は関東地方に台風24号が接近していた。
JRは午後8時以降の運休をアナウンスしていた。RIZINは午後3時開始で、那須川vs.堀口は全13試合のメインイベント。午後8時からの地上波放送で生中継されることになっていた。
お目当ての試合を見たら帰れなくなるのか? そんな心配をするファンも多かったはずだ。
そんな中、主催者は大会開始直前に3試合(ミルコ・クロコップvs.ロッキー・マルティネス、アンディ・ウィンvs.山本美憂、那須川vs.堀口)の試合順前倒しを発表する。
右往左往と言うのか一喜一憂と言うのか、こんな特殊なシチュエーション、忘れようにも忘れられないだろう。
非日常中の非日常。観客のテンションは、もはや「おかしなことになっていた」くらいのことを言ってもいいのではないか。この日、RIZINに初参戦したジェイク・ヒューンは、観客の沸き方を「控室にいたけど、雷が落ちたのかと思ったよ」と語っている。
堀口には蹴りが“見えて”いた。
ただ試合そのものに関しては、雷が落ちたような“衝撃的フィニッシュ”にはならなかった。そうなるには、お互いレベルが高いところで噛み合いすぎたということだろう。
一夜明け会見での那須川がサンダル姿だったのは、蹴りをブロックされて足を傷めたからだ。つまり堀口には、那須川の蹴りが“見えて”いたということになる。
堀口は試合前から落ち着いた、柔和と言ってもいいような表情を見せていた。時には笑顔にすらなっている。組み付かれることがないためMMAよりも近い距離で闘ってもいた。
打撃が届きやすい距離は、もちろん打撃をもらいやすい距離でもあるのだが、そこに躊躇なく入っていけるのが堀口の底知れなさだろう。2ラウンド中盤、至近距離で両者がパンチと蹴りを繰り出し、よけ合ったのは最大の見せ場の1つだった。