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バレー古賀紗理那の悩みを払拭した
母からの「カッコよかった」とは。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byNaoki Morita/AFLO SPORT
posted2018/10/04 08:00
世界選手権で存在感を放っている古賀紗理那。中田久美監督率いる全日本の主力の1人だ。
中田監督が挙げた物足りなさ。
そこにはサーブレシーブの返球率や、サイドアウト時のスパイク決定率、数字上ではさまざまな裏付けがあるのだが、それだけではない。中田監督はまた別の理由を挙げた。
「自分が絶対決めてやる、という気迫が感じられない。もう一皮、二皮むけないといけないし、技術もメンタルももっと成長できる。彼女は、それだけの力がある選手だと思っているので」
ネーションズリーグの後、8月にジャカルタで開催されたアジア競技大会の出場メンバーの中に古賀の名前はなかった。今季、最も重視するのは世界選手権とはいえ中田監督が「2020年の東京オリンピックのシミュレーションとして臨む」と言ってきたように、アジア大会は決してウェイトの低い大会ではない。
何より、リオ五輪出場を逃した古賀にとって、さまざまな競技の日本代表が一堂に会するアジア大会は、これまで経験したことのない「世界」や「日本代表」の覚悟を植え付けるための貴重な場になるはずだった。
それだけに、落選の通知は少なからぬショックを与えた。
「気持ちが完全に落ちていました。何をやってもうまくいかない気がしていたし、サーブレシーブで1、2本ミスをすれば代えられるので、ミスに対してものすごく怖さがありました。こんな状態じゃ厳しいだろうな、と頭で思ってはいたけれど、実際にアジア大会のメンバーには選ばない、と言われた時、大げさじゃなく、『あぁ、もう終わったのかもしれないな』って考えました」
「紗理那、高校生の時の方が」
ネーションズリーグ後、短い休暇で熊本の実家に帰省した。バレーボールを頭から外して、リラックスした時間を過ごす中、母の何気ない一言が胸に刺さった。
「紗理那、前のほうがよかったよね。高校生の時のほうが力が乗っていて、もっとスパイクがカッコよかったよ」
アドバイスではなく、ふとした日常会話ではあったが、一番自分を知る母がそんな風に見ていたのかと思うと、何が以前と違うのか、少し立ち止まって考えるようになった。
再び始まった全日本での合宿で若宮啓司トレーナーに相談すると、ヒットポイントが低くなっているのではないかと言われ、自分のポイントを確認するために壁打ちをしたらどうか、と提案された。