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バレー古賀紗理那の悩みを払拭した
母からの「カッコよかった」とは。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byNaoki Morita/AFLO SPORT
posted2018/10/04 08:00
世界選手権で存在感を放っている古賀紗理那。中田久美監督率いる全日本の主力の1人だ。
1人で壁に向かって打ち続けたら。
何かが変わるなら。バレーボール選手としては初歩的なその練習が、古賀にとっては転機になる。
「毎日ひたすら、壁に向かって1人で打ち続けたら、だんだん『ここかな』というポイントがわかってきたんです。同じ場所で打ち続けられれば無駄な力が入らないし、どれだけ打ち続けても肩が疲れない。それまでは気づかないうちにボールをとらえる場所が後ろになっていて、かぶり気味で打っていたんですけど、今は一番体重が乗るポイントがわかった。それだけで、スパイクの感覚がものすごく変わりました」
肩のヒットポジションだけでなく、今まで曖昧にしていたこともなぜうまくいくのか、いかないのかを追求した。たとえば、サーブレシーブの際に体勢が崩れても失点することなくセッターに返れば「今は体勢が悪かったのに何でうまく返ったんだろう」と反芻し、スパイク時も「トスが割れて苦しい状況のはずなのに、なぜちゃんとブロックを見て打つことができたのか」と理由を考え答えを探す。
サーブレシーブの面や目線で変化が生じることや、助走の幅やタイミングで工夫すれば多少思い通りのトスが来なくても自分のヒットポイントで打てること。今まで見過ごしていた些細なことが、実は大きな意味を持っていると気づいた。
最後の踏み込みを調整してみて。
自分が一番いいポジションで打つための状況をどうつくり出すか。そのヒントを得たのは、アジア大会期間中に所属するNECへ戻ってから。パスや二段トスからのスパイクなど基礎練習に励む中に加わりながら、自主練習で黙々と壁打ちを続ける古賀に、金子隆行監督が「速いトスを打つなら、最後の踏み込みで調整したほうがいいんじゃないか」と助言した。
言われてみればそれまでは速さを過剰に意識するあまり、助走も十分に取れないまま攻撃に入らざるを得ず、トスに合わせて前のめりになるため思い切って打つことができなかった。最後の踏み込みや、助走を確保するために何をすればいいのか。
「パスが速くてトスも速いと間に合わない。自分がボールに触る時はちょっと時間をつくって、しっかり入ろう、と意識するようになりました」