バレーボールPRESSBACK NUMBER
バレー古賀紗理那の悩みを払拭した
母からの「カッコよかった」とは。
posted2018/10/04 08:00
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Naoki Morita/AFLO SPORT
叩きつけるスパイクが、ズドン、と心地よい音を響かせる。
「すごく感覚がいいんです。どれだけ打ち続けても疲れない。自分でも、しっかり叩けているな、という実感があります」
世界選手権初日の9月29日、アルゼンチン戦を終えた直後のミックスゾーン。試合でかれました、と苦笑いを浮かべながら、古賀紗理那がかすれた声を絞り出す。
「アップではいい具合に汗をかいて、今日はいいな、と思っていたんです。でも試合が始まる直前になったらサーっと引いちゃって。ヤバイな、緊張しているな、大丈夫かな、と思ったんですけど、まず1本、気持ちよく決まってそこから乗れました」
小手先のテクニックでごまかすのではなく、一番力の乗る場所でスパイクを叩き込む。しかも1本だけではなく2本、3本と立て続けに豪快な音を響かせて。
まさに“躍動”と言うべき姿を見たのは、初めて全国にその名をとどろかせた高校時代までさかのぼるのではないか。
リオ五輪落選から結果が出ず。
次世代のエース候補と期待されながら、いつもあと一歩が乗り越えられずにいた。そんな彼女が、まだ世界選手権は始まったばかりとはいえ、ようやく一皮むけようとしている。
タオルで汗を拭う笑顔は、充実感で満ち溢れていた。
国内ではできても、世界を相手にするとなかなか結果を残すことができない。2015年のワールドカップや'16年のリオデジャネイロ五輪最終予選に出場しながらも五輪のメンバーには選ばれず、中田久美監督が率いた1年目の昨季もワールドグランドチャンピオンズカップの直前でメンバーから外れた。
今春のネーションズリーグもそう。攻守の要として期待されながらもなかなか調子は上がらず、思うようなパフォーマンスが発揮できない。最初はスタメンで起用されていたが、徐々にリザーブに回り、終盤につれ出場機会も減った。