相撲春秋BACK NUMBER
日馬富士が残した最後の言葉。
「世界を旅して勉強したい」
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph byKyodo News
posted2018/10/03 17:15
断髪式で横綱白鵬関(右)にキスされる元横綱日馬富士。
「世界を旅して勉強したい」
――これからの生活はどのように?
「私は18年間、相撲一筋で頑張ってきた力士なので、これからまずゆっくり休んで、どこかの国々へ――世界を旅して勉強したい。“相撲道”しかわからないので、来年あたりに勉強もし直して、新しい夢を見つけて頑張って行きたい」
――国々というのは?
「やっぱり力士がいる国ですね。ヨーロッパとかアジアとか、インドとか、行きたい国はたくさんありますので。新しい世界を勉強したい。いや、海外で学校に入るとかじゃなくて、旅行するだけです(笑)。旅行したことないから、初の旅行はどこにしようかな、と」
――断髪のあと、土俵にキスをなさっていたけど?
「土俵あっての相撲で、相手との力比べで。それを見てくれるファンの皆様がいるからこそ評価されるのが相撲ですので、そんな思いで初めて、チュウしただけです。土俵に感謝の言葉をつぶやいて」
「新モンゴル日馬富士学校」
――思い出の取組はなんですか?
「やっぱり序ノ口で優勝したことですね。すっごく嬉しくて、今でも忘れません。家に電話したこととか……。あとは最後の優勝じゃないですか」
――これから相撲になんらかの形で関わることは?
「みなさん知ってると思いますが、『新モンゴル日馬富士学校』といって、モンゴルで幼稚園から高校までの一貫教育の学校を作ってまして、今年740名でスタートしてます。私の学校はリーダーシップを育て上げるのではなく、日本式の挨拶、『おはようございます』『おかげさまで』『ありがとうございます』『いただきます』とか、先輩後輩の関係など、日本の力士の言葉を知ることによって、もっと日本人との会話や(日本に対する)親しみが生まれてくるんじゃないかと思います。
私の考えなんですけど、人が生きていくのに2つの道があると思っています。
ひとつは頭を使うこと。もうひとつは体を使うこと。
学校を通じて相撲、柔道、剣道、モンゴル相撲、レスリングなどスポーツの育成をします。もうひとつは頭――勉強させて世界じゅうの大学に行かせて、人材を作っていくことを考えています。将来的にうちの学校から相撲部屋に入る子が出て来たらうれしいと思います。 すみません、話が長くなっちゃったね。最後にそれだけ言いたかったの(笑)」
――(報道陣の笑い声)今後はモンゴルと日本が半々の生活ですか?
「まだわかりません。今日辞めたばかりで、今日から普通の生活が始まるんで。一生懸命頑張って、努力すれば開かれる道を探してますんで」