月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
宮沢りえ以来の貴乃花劇場が再び。
スポーツ紙の論調が割れる時は……。
posted2018/09/30 08:00
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph by
Takeshi Honda/JMPA
まさか9月の『スポーツ新聞時評』に広島カープの優勝が間に合うとは。強かったなぁカープ。
私が注視していたのは9月25日(火)だった。カープはマジック1で試合を迎えていた。優勝を決めれば翌日のスポーツ紙はカープ一色だろう。
しかし……。この日、貴乃花親方が相撲協会に退職届という大きなニュースが飛び込んできたのだ。
さぁ大変なことになった。明日の1面は貴乃花かカープか? インパクト的には貴乃花がやや有利か。カープは今日の優勝は避けたほうがいいかもと勝手に思いながら固唾をのんでいたのである。
結果は翌日以降に優勝持ち越し。ファンはやきもきしただろうが、大々的なカープ優勝紙面を味わうならこの日に限っては負けてよかったのかもしれない。
翌日の紙面を見ると、さすがプロの記者の方である。私の「貴乃花と野球、どちらが一面?」という心配をもっと掘り下げたコラムが2つあった。
貴乃花と宮沢りえが一面を占拠した日。
まずはスポニチ。「十字路」というコラム。
「広島のリーグ3連覇に備え緊張感高まる中、貴乃花親方の退職届のニュースが舞い込んだ。26年前が思い出された。'92年10月26日。森西武vs.野村ヤクルトの日本シリーズが第7戦で決着。その夜、貴花田と宮沢りえの婚約が発表された。翌27日付のスポーツ紙は貴りえ一色だった。」(9月26日)
ああ、思い出した! 貴乃花は26年前にもプロ野球の優勝を「食っていた」のだ。因果は巡る。カープ、やっぱりこの日は負けてよかったんじゃないか。
続いて日刊スポーツ。「とっておきメモ」というコラムのタイトルは『「貴&りえ」表面化も笑顔 言動の影響力には無頓着』。
昔から貴乃花親方を取材していた人が書いているのだろう。貴乃花親方を「善しあしは別に、自分の言動が与える影響力には無頓着だ」と書く。その具体例として、
「もう26年も前。当時の貴花田と宮沢りえの婚約が突如、表面化した。報道の引き金を引いたこともあり翌朝、事情説明に行くと『いいんだよ。むしろ早くマスコミに出て気が楽になったよ。隠れてコソコソって苦しかったから』と笑った。(略)そして今回の突然の辞職劇も同じ。周囲の騒ぎほど、本人はドラスチックにとらえていないはずだ。」
ここでも26年前の貴&りえについて触れられていたのである。しかも「報道の引き金を引いたこともあり」とあるので、報じた側としての当事者だったのだろう。26年前に若手記者だった人が点と点で語り、最後は貴乃花親方についてこう書く。
「少し立ち止まって熟慮することが出来なかったか。残念でならない。目もくれず体制派に立ち向かう。そんな一本気な性格にファンは魅力を感じるのだろうが、そのファンも置き去りにされてしまうほどの辞任劇だった。」