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新しい地図×土田和歌子、道下美里。
「“頑張って偉い”を超えて」
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTakuya Sugiyama
posted2018/10/04 11:30
「新しい地図」が話を聞いた土田和歌子選手(左)と道下美里選手。パラ競技には知らない世界が山ほどある。
“頑張れ”で終わらないために。
香取 僕はどこかで、パラアスリートに対して「障害を持っているのに頑張っていて偉い」という気持ちがありました。試合中、選手が転んだりミスをしたりしても、無意識のうちに「いいんだよ、頑張って」という思いで観ていた。
パラスポーツも健常者と同じだと頭では分かっていたつもりだったんですけど、肌で真剣勝負の熱を感じると「そうか、これだ!」と腑に落ちたんです。そしてこの感覚をもっと多くの人に味わってもらわなきゃと強く思いました。2020年に初めて会場に行くのでは遅いと思うんです。それだと多くの人が「頑張って、すごいね」で終わってしまう。
土田 本当にそうですね。ルールや障害のクラス分けについても、観戦前に知っておくとより楽しく観られますしね。
香取 そう! 平昌でも細かいクラスを把握するのが本当に難しかったんです。
道下 ブラインドマラソンは視力の程度によってクラスが分かれ、パラリンピックでは3つ(T11、T12、T13)に分かれています。一見、細分化されているように見えますが、選手としては「条件が同じとはいえない」と思うこともあります。私はT12ですが、同クラスにも視力が良くて、伴走者ナシで走れる人もいます。
目標はやっぱり、金メダルです。
草なぎ 観ている側からすると、3クラスでも多いなと思ってしまうけど……条件の異なる中でメダルを争うのは大変ですね。
道下 ちなみにパラリンピックではT11とT12は同時にスタートします。
稲垣 それも難しさがありますね。でも観る方にも知識が求められる反面、クラス分けの難しさを含めて、その背景を知れば知るほど奥が深い。面白いです。
土田 トライアスロンは先日、東京パラで実施されるクラスが発表されました。私のクラス(PTWC)は入ったのですが、該当クラスが除外されてしまった日本の有力選手もいる。その選手の悔しさは勝敗とは違ったものです。彼ら彼女らの分まで頑張らないと、と思っています。
草なぎ 土田さんの目標はやっぱり……?
土田 金メダルです。アイススレッジと陸上競技では金メダルを取りましたが、トライアスロンでもやっぱり欲しい。
道下 私ももちろん金メダルです。銀じゃだめ。実は私はレース前はプレッシャーはほとんど感じないタイプなんです。でも2回目の大舞台では、リオでピリピリしてしまった反省を踏まえ、チーム全体で落ち着きを保って最高の結果を出したいです。