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新しい地図×土田和歌子、道下美里。
「“頑張って偉い”を超えて」
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTakuya Sugiyama
posted2018/10/04 11:30
「新しい地図」が話を聞いた土田和歌子選手(左)と道下美里選手。パラ競技には知らない世界が山ほどある。
吾郎さんでも……きついです。
草なぎ 吾郎さんなら入るかもよ。
稲垣 僕は細い方ですが……きつい。競技では、ここに入って正座のまま両手でホイールを回して走るんですよね。正座をして力を出す。日常生活ではありえませんね。
土田 難しいですよね。私自身、車いすで走ることを突き詰めてきたと思ったのですが、トライアスロンに転向して発見がありました。肩甲骨周りなど関節の可動域が広がって身体の柔軟性もあがり、新しい力の入れ方ができるようになったんです。ちなみに水泳の動きは陸上と真逆です。車いすを漕ぐ時は肩甲骨を締めてホイールを回すのですが、水を掻く時には肩甲骨を開く。
稲垣 両方の動きができると身体のバランスが良くなるんじゃないですか?
土田 おっしゃるとおり。アスリートとしてレベルが上がったかなと思います。
香取 乗り物も進化しているんですか?
土田 性能はどんどん良くなっています。私のは最先端の日本製で素材はカーボン。これまでアルミ製が主流でしたが、カーボンの方が軽いので気に入っています。日本製は外国の選手も乗りたがっているくらい高性能ですから、東京パラでは国産車が多く見られるはずです。ちなみに自転車と同じで細いタイヤには空気が入っているので、レース中にパンクすることもある。その場合は自分で直さないといけないので工具を座席に積んでいるんです。
アスリートへの姿勢に同情がない。
草なぎ 座面の後ろに収納スペースがありますね。メンテナンスは苦手な女性もいそう。
土田 男子だとパンクを2分以内に修理してしまう神技を持つ人もいます。
草なぎ 道下さんの道具は伴走者と繋がるロープですよね。
道下 はい。手芸屋さんで購入しましたが、かなり吟味して選んでいます。円周の長さとか手触りの柔らかさ、色々な種類を試してこれにたどり着きました。
土田 皆さんは何かパラスポーツを体験されたり、観戦されたりしましたか?
草なぎ この間、ボッチャを初体験してきましたが本当に面白かったので、他の競技も勉強したいと思っています。慎吾は平昌パラを観戦しているし、僕らの中で一番パラスポーツの現場に足を運んでいるよね。
香取 現地で観戦してハッとさせられたことがあるんです。アイスホッケー会場にいったときに、選手が気の抜けたプレーしたり、ミスをすると観客から「何やってんだ!」ってヤジが飛んでいた。アスリートへの姿勢に変な同情がないことに驚いたんです。
稲垣 そんな雰囲気なんだね!