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2020を目指すフェンサー・東晟良。
「まずはW杯、その次に東京五輪」
posted2018/10/02 17:00
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Asami Enomoto
マスクをつけた瞬間、アドレナリンが体中を駆けめぐる。
対戦相手と対峙し、剣を持ち構えると、視線はまっすぐ相手だけを捉える。
フェンサー・東晟良(あずま せら)の勝負のスイッチが入る瞬間だ。
昨年12月の全日本選手権女子フルーレ個人では史上初の高校生女王を戴冠し、今年8月のアジア大会では女子フルーレ団体の金メダル獲得に貢献。同大会では個人でも表彰台に上がるなど、フェンシング界注目の若手剣士として期待されている。
持ち味は脚力とバネを活かした積極果敢な攻撃だ。緩急をつけた動作で相手を翻弄し、得点を積み重ねる。周囲も評価する攻撃力だが、伸び盛りの19歳は、まだまだ現状に満足はしていない。
「攻撃と一言にいっても、その種類はいろいろあります。もっと違う攻撃のやり方を身につけるというかバリエーションを増やして、相手が読みづらい攻撃をもっと仕掛けていかないと」
後ろに下がるときにも自信が大事。
得意の分野の強化はもちろん、冷静に自分を見極めて、課題克服にも取り組んでいる。
「私は後ろに下がることに対して少し苦手意識があるんです。でも、相手に突かれそうだからって後ろに下がってしまったら、体が縮こまって相手にやられる確率が高くなる。コーチにもよく言われているんですが、後ろに下がるときも自信を持つことが大事。そう自分に言い聞かせながらピストに上がっています」
初めて剣を手にしたのは10歳の頃。1つ年上の姉・莉央とともに練習場に通い始めた。最初はなかなか勝てなかったというが、約1年半後には小学生の国際大会(国際ケーニヒ杯)で優勝するまでの実力を身に付けた。
「気づいたときにはすでにフェンシングをする環境になっていました。実は母が昔、フェンシングをやっていて五輪出場を夢見ていたんです。でも、事情があって目指せなくなってしまって。そういう話もよく聞いていたので、代わりに私が五輪へという思いが強くなりました」