プロ野球亭日乗BACK NUMBER
焦るな! そして皆で我慢しよう。
大谷翔平の投打の復帰時期を考える。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byMasterpress/Getty Images
posted2018/09/29 17:30
大谷の手術は全米でも最高の腕を持つ“スーパードクター”のニール・エラトロッシュ医師が担当する。
日本流のリハビリとメンテナンス。
田中の場合は患部のリハビリだけでなく、体全体のバランスを保ちながらトータルでリハビリを行い、現在もシーズン中に専任の理学療法士がついてメンテナンスを行っている。
この日本流のリハビリ過程とその後のメンテナンスが肘の故障から完全復帰できたカギだったと指摘する声を多く聞くのだ。
もちろんアメリカのリハビリも手術や治療をした患部のマニュアルはしっかりしたものがあるし、多くの選手はそれにそって復帰の過程を歩んでいる。松坂も和田も、ダルビッシュも基本的にはそのマニュアルにのっとってリハビリを行い、大谷の場合もそのリハビリメニューにそっていくと、打者としては早ければ開幕復帰も可能となるわけだ。
ただ田中のように全身のバランスをトータルで整えながらリハビリを行い、投手として100%の復帰を目指すとなれば、そうは簡単ではないという声を聞く。
「打者での復帰も慎重に進めた方がいい」
「おそらく術後10カ月は打者としての復帰もできないのではないか」
田中のリハビリ過程を知るあるトレーナーはこう指摘している。
「たとえボールを投げることがない指名打者でも打者復帰となると、試合に出て体にそれなりの負担はかかる。そういう身体の各所で生じた負担のツケを、最後に払わされるのが投手の場合は肘になる。だからリハビリ段階から、そういう負担をいかに取り除いて復帰の道を歩めるかが大事になってくるんです」
投手での復帰という最終目標のためにはだから、打者をある程度犠牲にしなければならないということだ。
「リハビリがかなり進まない限り、打者として早期復帰するのは、投手としての完全復帰を妨げる可能性がある。だから打者での復帰も慎重に進めた方がいい」
そのトレーナーの見解だった。