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日本人新記録のシーズン74登板。
平野佳寿のフル回転を支える人物。
text by
木崎英夫Hideo Kizaki
photograph byGetty Images
posted2018/09/26 08:00
日本人1シーズン最多の74登板を果たした平野佳寿。そのタフネスぶりはMLBでも屈指だ。
思い通りに動く体にしてあげる。
丸山氏は平野が日本時代から継続する日々のコンディショニングに、体のバランスを確認しながら治療を施し、効率的に力を伝達できるように体を整えている。登板数が多い中継ぎ投手は疲労から体のバランスを崩しがちとなるため、その日の状態に合わせたエクササイズも加えて、少々の疲労でも登板できるように調整しているのだ。
「各関節などの機能が正しく動くようにしてあげるのが私の役割の1つです。それは社会人野球のトーナメントを戦う投手、またプロ野球で連日登板を果たす投手と関わる中で学び得たもので、この点は平野に対しても同じ考えです」
さらに丸山氏は言葉を継いだ。
「近年、機能的な能力を獲得するためのコンディショニング方法がようやく浸透し始めています。私の立場としては、選手を思い通りに動く体にしてあげることが大前提です。それにはまず、疲労から動きづらくなっている筋肉を様々な治療方法で改善し、それによって選手がエクササイズや練習の効果を最大限に得ることが可能になり、怪我の予防にもつながってきます」
世界最高峰の夢舞台で安定した投球を続ける平野の体が正しく機能するように治療を施すことが、右腕のイメージするパフォーマンスを手助けする――。丸山氏の手堅い説明は、水が砂地に染み入るようにすんなりと腑に落ちる。
6月の10連戦で施された治療。
その実践知に触れたのは6月のこと。
18日からの10日間でアナハイムからピッツバーグ、そしてマイアミの3都市を回った遠征3カードはDバックスの今季最長移動となった。移動日なしで29日からアリゾナの本拠地で始まる10連戦を迎える朝、丸山氏は平野邸に出向き、各関節機能を正常に保つ治療を施している。
特に長時間の移動で動きが硬くなる股関節周辺は入念で、これを怠ると腰痛や肩痛の原因となり、また投球の効率的な力の伝達の妨げにもなるからだ。遠征先ではホテルでの治療もしばしば施される。
登板後に平野が何度も口にしてきた「しっかりケアをしてまた頑張りたい」には、丸山氏の視線が転写されている。