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日本人新記録のシーズン74登板。
平野佳寿のフル回転を支える人物。
text by
木崎英夫Hideo Kizaki
photograph byGetty Images
posted2018/09/26 08:00
日本人1シーズン最多の74登板を果たした平野佳寿。そのタフネスぶりはMLBでも屈指だ。
トレーナーと選手では視点が違う。
この信条は、トレーナーとして平野と接するすべての行為で一貫している。
「例えば、肩関節を正しい位置に戻す治療を施した場合でも、本人が肩の状態を気にしていないときは必要以上のことは伝えません。なぜなら、選手にとって不必要な情報を与えた結果、その部位が気になってしまうケースもあると思うからです。トレーナーと選手では視点が違いますし、当然、知っておくべきことは違っていいと考えています」
選手との接し方には「いい加減さが必要」と丸山氏。ただ、この「いい加減」とは「適当に」ということではなく、「与え過ぎず、与えなさ過ぎず……」であり、「い・い・加減」と語気を変える。簡にして要を得た丸山氏の言葉には積んだ研鑽の日々が凝縮されている。
もっとも、コンディショニングにおいては的確な指示を出し、平野が本来の力を発揮できるよう体のバランスを整える動きを求める。その一例を挙げよう。
9月9日、前日に今季2度目の3日連続登板を果たした平野はデーゲーム前のフィールドで、通常行なうアップとキャッチボール、相手を座らせた軽めの投球練習を終えると、ひと息ついてから体のバランスを整えるためのメニューに移行した。
まずは正面を向いてランニングやジグザグ走を、次は横方向に進むサイドステップ、そして最後は腰を回転させながら横方向へ進む動作で約20メートルの距離を往復。投球は一方向への動きを繰り返すので、多方向への動きをさせて体の状態を確認させるのだ。一見、特別なことには見えないメニューでも、平野はその意味を理解して一つひとつを消化していく。
試合前4時間前から黙々と練習。
その時の丸山氏の指示は短く「3方向の運動をやっておこうか」。それを聞いた平野は思い出したように「あ、そうですね」と即答した。
二人の阿吽の呼吸が乱れることはない。
前回のコラム(https://number.bunshun.jp/articles/-/831361)で記したように、平野は体幹に重点を置いたエクササイズを試合前のルーティーンとし、臥位、立位での前後左右のバランスを確認しながら20種ものメニューをこなす。
付言すると、平野は試合開始時刻の約4時間前に球場入りし黙々とメニューを消化していく。仕上げはバイクを漕いで心肺機能を高め、中継ぎ陣の練習に合流する。