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日本人新記録のシーズン74登板。
平野佳寿のフル回転を支える人物。
text by
木崎英夫Hideo Kizaki
photograph byGetty Images
posted2018/09/26 08:00
日本人1シーズン最多の74登板を果たした平野佳寿。そのタフネスぶりはMLBでも屈指だ。
たった1年で築き上げた信頼関係。
2016年にオリックスに採用された丸山氏はファームでコンディショニングとリハビリを兼務。その年の秋季キャンプで一軍付きとなったが、ベテラン組は参加が義務付けられていなかったため、平野を診るようになったのは翌年からだった。
僅か1年の付き合いでメジャー挑戦の伴侶とした理由は何だったのか。平野は淀みなく言った。
「僕の体をよく理解してくれていると確信したのが一番。これまで会った方の中で最も親身になってくれて勉強家。もちろん、腕の確かさも感じたからです。加えて、人柄というか人間性の高さにも感じ入るところがあったので決めました」
個人トレーナーを帯同させる許可をDバックスから得ていた平野は、チームに溶け込める協調性のある誠実な人を絶対条件にしていた。その真情を「腕自慢で我の強い人ならその本人にも僕にもマイナスになるのは分かってますからね」と話すと、こんな秘話を明かした。
「実は、球団から『丸山はだめだ』と止められたんですよ。だから最後は本人に委ねることで了解してもらう形になったんです。丸山さんを慕っていた選手は多かったから文句が出たでしょうね(笑)」
人間性の大切さを理解して。
春先だったか、丸山氏がこんな話をしていた。
「学生時代に先生方やトレーナーの諸先輩方からよく言われたのは“人間性”についてのことで、その大切さを皆さんが強調されていました。年齢を重ねて、だんだんとその意味を理解できるようになってきました」
余談だが、ここまで何度も伺った専門的な話を丸山氏は平易に分かりやすく解いた。トレーナーとして経験が浅かった若かりし頃は、選手に認めてもらいたいという気持ちが強く、饒舌に知識を繰り出す傾向にあったと言う。首尾整った論を平易に軽やかに説けるのも人としての成長と軌を一にしているようである。
その夜、丸山氏は淡々と言った。
「体も戦術的な部分も本人がしっかり準備してきた証ですね」
トレーナーという職業を照らし出す言葉に、篤実な謙虚さが伝わる。34歳で大リーグに挑んだルーキー平野佳寿の活躍は、丸山哲氏を抜きにしては語れない。
二人三脚で進んだ手探りの道も踏破まであと少し。