“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
1クラブで長く背番号10を着ける男。
宮澤裕樹は札幌と北海道の顔だ。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/09/23 09:00
他クラブのナンバー10と比べると知名度は高くないかもしれない。しかし宮澤裕樹には長年10番を背負って築いたものがある。
ポジティブな気持ちになって。
自分が変わることで“器用貧乏”という引け目も消えたようだ。
「いろんなポジションを経験したことで色々な見え方ができるし、自分なりに成長したかなと思います」
ポジティブに考えられることで、彼の視界は一気に開けた。
「俺は俺のままで良い」
この想いは大きな自信となって、背中を強く押してくれている。
9月15日のJ1第26節・川崎フロンターレ戦。この試合は北海道胆振東部地震の影響で1週間近く練習できないなど、万全ではない中で臨んだ。チームは立ち上がりこそチャンスを作ったが、徐々に運動量が落ち、ミスから失点を重ねて0-7の大敗を喫した。スタメン出場した宮澤も、ハーフタイムで交代を命じられるなど、不本意なものとなった。
大敗後の声援に心を打たれた。
それでも試合後、彼は大差をつけられても声援を送ってくれたサポーターに感謝を口にした。
「本当に心を打たれたと言うか……サポーターの皆さんも辛い想いをしているのに、あそこまでの声を僕たちに送ってくれた。その分、俺は選手として何かしら残したいという気持ちがより強くなりました。
こういう大災害があったときにこそ、俺がやるべきことは、北海道出身のコンサドーレ札幌の10番であり、キャプテンが頑張っている姿を見せることだと思うので、そこは絶対に忘れないようにやっていきたい。北海道に何かしら残したい。もっと頑張りたいと強く思いました」
前を向けたからこそ、想いはあふれる。地域密着を目指すJリーグにおいて、地元出身の選手がクラブで活躍するだけでも意義があるが、ルーキーから11年間在籍し、9年間も10番をつけ続け、J1で上位につけるキャプテンとして先頭に立っている。これは他のどのクラブを見渡しても、宮澤以外は存在しない。