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馬術の世界選手権でメダルに肉薄!
「日本もいるぞと存在感を示せた」 

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北野あづさ

北野あづさAzusa Kitano

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photograph byAzusa Kitano

posted2018/09/24 11:00

馬術の世界選手権でメダルに肉薄!「日本もいるぞと存在感を示せた」<Number Web> photograph by Azusa Kitano

東京オリンピックでは、馬術競技は馬事公苑と青海の海の森クロスカントリーコースで行われる。

4位に浮上して出た「メダル」という言葉。

 2人目は北島。攻めの姿勢で走行していたが、コース後半にアクシデントが起きた。馬が障害物に肢をぶつけて、障害物についている安全装置が作動したことで減点を負った。

 さらに、馬とのコンタクトに欠かせない手綱が切れてしまった。とっさに切れた手綱をつかんだが、次の障害物へのアプローチに間に合わず、遠回りのルートを選択せざるを得なくなって、かなりタイムをロスした。

 3人目はいつもひょうひょうとしているイメージの田中。穏やかな表情でクロスカントリーを走行していたが、終わってみればわずか2秒のタイムオーバー。

 そして4人目はキャプテン、大岩。ザ・デュークオブカヴァンという馬で出場することになっていたが、現地に入ってから馬の調子が悪く、急遽ドイツからもう1頭のキャレを輸送して本番にギリギリ間に合った。

 キャレは少し怖がりな馬で大岩は何かあっても対応できる準備をしていたが、実際にはキャレは自信に満ちた走りをして、15秒のタイムオーバーでゴールした。

 上位国にミスが出る一方で日本は確実な走行で減点を抑え、クロスカントリー終了時点で4位に浮上。俄然、士気が上がった。

 細野や大岩の口から「メダルを狙う」という言葉が出た。「これまで、世界選手権でメダルなんて言ったら、日本が何を言ってるんだ?という感じだったけれど、今なら言ってもいいと思う」と大岩。日本が初めて、現実的にメダルを意識することができた日だった。

世界の強豪国の間に割って入った日本。

 今大会は、ハリケーン・フローレンスがノースカロライナを直撃する、というニュースが流れていたまさにその時、その場所で行われていた。その影響で最終種目の障害馬術競技は1日延期された。

 暫定4位の日本と、3位のフランスとの減点差は9.10。これは、障害馬術競技でバーの落下が3回あると逆転する差である。日本ができることは減点0でゴールすることで、北島はノーミス、田中はタイムオーバーの減点1、大岩はバーを1つ落として減点4、戸本は2つ落として減点8。最終的に日本のトータル減点は113.90。

 上位国にもミスは出たが、順位は変わらなかった。1位はイギリス、2位はアイルランド、3位はフランス。いずれも選手層の厚い、常に国際大会で活躍している国である。5位はドイツ、6位はオーストラリア。強豪国の間に日本が割って入った。

 世界選手権で4位。一般的に見れば何とも微妙な順位だ。しかし、東京オリンピックに向けたマイルストーンの2つ目を、日本の総合馬術チームは確実にクリアした。しかも、メダルに限りなく近い4位で。

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