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桃田賢斗「まわりに支えてもらって」
一度は薄れかけた力を強く感じて。
posted2018/09/24 17:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Getty Images
大会が終わって数日という時を経ても、そのプレーと優勝が決まった瞬間の姿は印象的だ。
9月16日、バドミントンのジャンパンオープン男子シングルス決勝。桃田賢斗はスマッシュを決めて勝利を得ると緊張からの解放感からか、ひざまずいた。
今夏の世界選手権を制し、アジア大会は疲労もあって優勝には至らなかったが、ジャパンオープンには、「世界選手権より勝ちたかった」というほど期すものがあった。
1つの理由としては、世界選手権で成績ほどの手応えを得られなかったからだ。同選手権では強豪選手が次々に敗退し、直接対戦する機会がない中での優勝となった。桃田自身も腹筋を痛め、ディフェンスを意識した戦いを余儀なくされた。引き出しの多さで勝利を手にしたがが、それも手応えを薄れさせた要因になったかもしれない。
迎えた今大会には海外の強豪選手が集い、日本で行なわれる国際大会では最高峰に位置づけられる。組み合わせを考えても、そうそうたる顔ぶれとぶつかることが予想され、勝利への欲求は強かった。
昨年、復帰直後の桃田は観客席にいた。
しかし、それだけが理由ではなかった。
昨年、桃田は不祥事による謹慎から競技に復帰したが、ランキングが下がっていたためジャパンオープンには出場できず観客席から試合を見守った。そのときよぎった気持ちを明かす。
「この舞台に立つことすらできないと思っていました」
そんな思いに駆られた大会に、今年出場を果たすことができた。だから今大会への思いは一層強まっていた。
そして桃田は、単なる復活以上の成長を見せつけた。