草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
コンプライアンスとは何か。
中日は昭和の遺風から脱却できていない。
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byKyodo News
posted2018/09/14 13:20
チーム不調の原因はさまざまだが、中日が圧倒的に強かった時代を知るファンは今も多い。あの栄光を早く取り戻して欲しいものだが……。
報道する側の善意の翻訳や忖度も。
コンプライアンスとは難しいもので、たとえば森監督は試合後の会見で投手交代について質問され「そんなことはないよ。バカか。もういいわ」と吐き捨て、最下位に転落したことへの反応も「よかったね。そういうこともあるだろ」で済ませたケースがある。
これらの言葉が報道されることがほとんどないのは、報道する側が善意の翻訳をしたり、忖度するからだ。取材対象者と取材者の間には緊張感とともに互いへの敬意があるのが理想だが、現状では難しいようだ。それに対して「森監督や朝倉コーチの素顔は人情味あふれる人で、実はとっても優しいんだよ」といういい人説がある。
筆者はそれを否定するつもりはないし、きっとそうなのだろう。しかし、それは論点がずれている。コンプライアンスの観点で問題になるのは、その人物の素顔ではなく「どの状況でどういった趣旨の発言をしたのか」だからだ。
たとえば北海道で大地震が発生した翌7日、日本ハムの栗山英樹監督は「野球をやることで皆さんが前に進む力になれるのであるならやるしかない。そういう野球人としての使命、責任がある。命がけでやるという姿を見せないといけない」と話している。
言うまでもないが試合後の監督会見は公式の場だ。外部に向けて自分たちの野球のすばらしさを、さまざまなメッセージにして発信する絶好機でもある。チームを代表した会見で、質問者に「バカか」と言ったり、大勢が見ている前で観客と罵倒しあうのはもはやキャラや人格とは無関係の次元ということになる。
週刊文春は何を報じたか?
もっとも筆者が問いたいのは監督、コーチ、選手ではなく中日ドラゴンズという組織の品位であり品格だ。
たとえば9月6日号の週刊文春がいわゆる「文春砲」を打ち込んだ。記事は今年1月に私設応援団長、事務局長への強要事件で逮捕された元暴力団員であるA氏が、中日ドラゴンズの現役職員であるS氏との親密交際を告発する内容だ。
記事にある「飲食をともにしたこと(支払いはA氏)」「チケットを提供したこと」を球団側は否定しておらず、明確に否定しているのは「商品券を渡された(記事では回答していない)」という部分だけだ。ほぼ球団としての取材対応はしていないのだが、飲食についてはあくまでも「情報収集」であるから、癒着ではないという驚くべき姿勢を貫いている。
反社会勢力に属していた人物と飲食をともにする「情報収集活動」が、コンプライアンスに反するのは今や社会人1年生でも知っている。しかもこのS氏は愛知県警OBであり、球団では暴力団排除を担当している。ここまでくればもはやネタとしか思えない。なお、S氏の姿は週刊文春報道後もナゴヤドームや遠征先で確認されているので、どうやら通常業務を続けているようだ。