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久保康友を生き残らせた頭の使い方。
松坂世代の「できない子」の視線。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byKyodo News
posted2018/09/13 07:00
ひげも生やし、自然体でアメリカに挑む久保康友。個性的なキャリアにまた彩りが加わった。
怪我するほど頑張ったことがない。
「ずっと控えでいると、できなくて当たり前なんで、じゃあ、エースにどうやったら勝てるのかな? なんであいつ凄いんかな? って考えることが普通の習慣になる。自分の周りに凄いやつが常にいるんで、こいつをどうやって倒すのかな? って思うことが習慣になるんですよ」
彼は現役時代、チームメイトや対戦相手を「じーっと眺めていた」と言う。観察だ。
「配球がどうとか言う以前に、メカニックス(投球フォーム)のこととか考えるわけです。そこがダメだと1球投げただけでも怪我するし、ちゃんとしてれば1日に500球以上投げたって怪我しない。
実は僕、怪我って1回もしたことない。そもそも怪我するほど頑張ったことがない。なんか変な感じがするなと思ったら、すぐ止めていた。そこを皆、無理して怪我するから。あともうちょっとでレギュラーになれるとかで頑張った時に怪我してしまって、結局それが原因で辞めちゃう人を僕は今まで何十人と見てきてる」
結局のところ、と久保は言う。
「他の誰にでも勝てる人が唯一、勝てないのが自分の怪我なんです。そこら辺はプロ入ってすぐに分かりました。あ、これは怪我だけせんかったら、なんとかやれるんちゃうかなって」
「レールを敷いてしまうと面白くないでしょう」
そういうザックリした考え方はおそらく、アメリカに来てからも役に立っている。
「朝、早くに飛行機で遠征して2時間ぐらい寝ただけで先発したりとか、バスで15時間ぐらいかけて移動して試合したりとか、そんなんばっかり。日本みたいにがっちり計画立ててやっても、それ通りにいかない。
だから何が起こってもいいように準備しておくのが一番いい。こっちの人って急になんか予定が変わっても、ああそう? みたいな感じだし、それが当たり前になってきた」
スキーターズでは11試合(先発10試合)に投げて4勝2敗、防御率5.04という成績で、投手コーチなどは「来年も来てくれるなら契約したい」と言う。久保はこれからの自分について何を思い浮かべているのか。
「そんなん、思い浮かべてレール敷きたいですか? レール敷くなら日本にもあるから、そのレールに乗ればいいけど、敷いてしまうと面白くないでしょう」
行き当たりばったりのようで、実は考え抜いての行動。熟慮しての行動のようで、実は成り行き任せ。
松坂世代「最後の大物」は、人生を楽しみながらBaseballの世界に身を置いている。