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久保康友を生き残らせた頭の使い方。
松坂世代の「できない子」の視線。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byKyodo News
posted2018/09/13 07:00
ひげも生やし、自然体でアメリカに挑む久保康友。個性的なキャリアにまた彩りが加わった。
「日本のプロ野球って……」
「日本のプロ野球って、自分からやりたいって言って行くもんじゃなく、球団から欲しいって思われて行くものだから、自由契約になって1週間も経って何の話もなかったら、それはもう必要とされてないってこと。
周りの人には『もう少し待たなアカン』みたいなこと言われましたし、最後まで粘ればどこか引っ掛かったかも知れないけど、それは『要るか。要らないか』のレベルであって、欲しいというレベルじゃない」
潔い決断だったが、進路は「何も考えてなかった」と言う。
「オフの間に俊介さんと食事することがあって、その時に『アメリカってどうなんですか?』って聞いたら、あの生真面目な人が『何とでもなるよ~』なんて言う。それで『あっ、アメリカにはこの人の性格をガラッと変える何かがあるんだな』って思ったのが最初です」
久保が言う「俊介さん」と言うのは、千葉ロッテ時代の先輩で、彼が今プレーしている同じアトランティック・リーグのランカスターでも活躍した渡辺俊介(現・新日鐵住金かずさマジック投手兼任コーチ)のことだ。
「通訳とかいたら面白くないでしょう?」
外国でのプレーを目指して動き出したものの、気がつけば最初に希望していたメキシカン・リーグではなく、スキーターズとは違うインディアナ州の独立リーグ球団でプレーしていた。
「キャッチボールもしていなかった」という「ぶっつけ本番」で投げ続けていると、7月に現在のチームへのトレードが決まった。単身赴任で、代理人もいなければ通訳もいないので、いろいろ大変だったろう、と思いきや、本人はさらりと「そういうのを求めていた」と言う。
「翻訳機を持ってきたんですけど、それで話しかけたら相手は『あ、こいつ、英語できるんか』って勘違いして、わーって話しかけてくるから分からない。でも、通訳とかいたら面白くないでしょう? 急に英語がうまくなるとは思わへんけど、せっかくアメリカに来てるんやし、アメリカ人の家にホームステイしたいと思ってるぐらいですしね」