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イタリア版グアルディオラとは?
デゼルビという監督を知ってますか。 

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手嶋真彦

手嶋真彦Masahiko Tejima

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photograph byGetty Images

posted2018/09/12 10:30

イタリア版グアルディオラとは?デゼルビという監督を知ってますか。<Number Web> photograph by Getty Images

外見に共通点は見当たらない。しかしロベルト・デゼルビが「イタリアのグアルディオラ」と呼ばれることには理由がある。

負けても折れないところに強さがある。

 ポジショナルプレーとは何か。ピッチ上の11人が正しいポジションを取り続け、試合を優位に運ぼうとする戦い方だと言えるだろう。選手個々の動き方には、合理的な原則がある。

 そうしたフィロソフィーを共有し、ピッチ上で実行し、試合で機能させ続けるのは難しい。デゼルビはそれを3部リーグで試みた。ただし、この監督の名前を覚えていただきたいのは、いわば最先端のサッカーを追求し続けているからではない。

 フォッジャでの評判はセリエAのクラブにも伝わり、監督4年目の2016-17シーズンはパレルモで、続く17-18シーズンはベネベントで指揮を執る。

 結果自体は惨憺たるものだった。パレルモでは12戦1勝2分9敗で途中解任となり、チームはそのままセリエBに降格。ベネベントでも29戦6勝3分20敗でセリエB降格という結末となる。

 しかし、ポジショナルプレーという志向自体は変わらなかった。デゼルビの凄みはそこにある。どれだけ負けても、折れない強さだ。

“首切り魔”をも魅了したサッカー観。

 結果が出ないと監督の首をすぐに挿げ替える“首切り魔”として有名なパレルモのマウリツィオ・ザンパリーニ会長でさえ、デゼルビに限っては7連敗(コッパ・イタリアを含めれば8連敗)まで我慢した。5連敗の時点で、報道陣にこう語っている。

「今、デゼルビを信じているほど、監督を信じたことはない。(デゼルビに)経験が足りないのは本当だ。しかし、彼の(積極的に仕掛ける)提案型のサッカーが、私は好きでね。彼に必要なのは時間だけであって、私の下でそれを得るだろう。

 デゼルビはグアルディオラと同じアイデアを持っている。マンチェスター・シティでグアルディオラが持っているのと同じ組織を、彼は持っていないというだけだ」

 世界最高レベルの戦いで、信念を貫きながら勝ち続けるのは難しい。しかし、信念を貫きながら負け続けるのは、さらに難しいかもしれない。余程のメンタルタフネスがなければ、どこかで妥協してしまうのではないか。妥協を受け入れないそうした強さは、誰にでも持てるものではない。

 極端に堪え性のないザンパリーニが、しかも経験不足だと認めながら、その青年監督に賭けようとしていたのは、やはり特別な何かを見出していたからに違いない。それがカリスマなのか、何なのか。デゼルビの人物評には「知的で抜け目がない」というものも、「無遠慮で生意気だが、大胆で勇敢」といったものもある。

【次ページ】 強い信念を選手と共有して成長する。

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