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イタリア版グアルディオラとは?
デゼルビという監督を知ってますか。
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph byGetty Images
posted2018/09/12 10:30
外見に共通点は見当たらない。しかしロベルト・デゼルビが「イタリアのグアルディオラ」と呼ばれることには理由がある。
強い信念を選手と共有して成長する。
しかも、ただ“強い”だけではない。"しなやか"にも映る。
デゼルビがこんな話をしていたのは、ベネベント監督時代だった。
「結果に到達するための最善の道がどこにあるか、私は理解しようと努めている。まだ真理らしきものは掴めていない。その意味で、私のチームのベストプレーヤーたち、例えばサンドロやサニャとの対話は、日々私を豊かにしてくれる」
名前が挙がった元フランス代表DFにして、マンチェスター・シティ時代はグアルディオラに師事しているバカリ・サニャは、両監督の類似点を認めながら、違いもあるというような話をしていた。
いくらか抽象的だったその話を他の証言にも照らして解釈すると、こうなるか。選手との距離感はデゼルビのほうが近く、ベネベントの選手たちは試行錯誤のプロセスを監督と共有しているような感覚にも陥っていた……。
だとすると、強い信念を持ち続け、しかも選手とともに成長し続ける、逞しい青年監督の姿が浮かび上がる。
今季は3試合を終えてセリエAの単独2位。
今季のデゼルビは、過去2年と同様のプロビンチャ(地方クラブ)であるサッスオーロの監督として3年目のセリエAに挑んでいる。開幕戦は4-3-3システムの“偽の9番”に元ガーナ代表の実力者で新戦力のケビン・プリンス・ボアテンクを据え、優勝候補の一角を占めるインテルから1-0の金星を挙げた。
3節はシステムを変え、いわば“偽のウイング”を両翼に配する3-4-3でジェノアから5-3の勝利を収めている。まだプレシーズンキャンプが始まって間もない頃、こう語っていた通りに。
「最初のヒエラルキーだけは私が作る。しかし、ピッチ上の化学反応によって、それは変わり得る」
以前には、こうも言っていた。
「私の考えでは、選手が常に主役。選手が最大限表現できるようにするのが私の目標だ。組織から出発するのではない。組織に到達するために、個人から出発する」
どちらもシーズン途中からの監督就任だった過去2季との大きな違いは、プレシーズンの準備の有無だろう。その違いはやはり大きいのか、今季は3節を終えた現時点で2勝1分無敗。まだ序盤戦にすぎないとはいえ、セリエAの単独2位につけている。