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観客の願望を叶えるC大阪ソウザ。
名手は敵もファンも見事に「騙す」。 

text by

熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

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photograph byGetty Images

posted2018/09/07 10:30

観客の願望を叶えるC大阪ソウザ。名手は敵もファンも見事に「騙す」。<Number Web> photograph by Getty Images

パワー、スピード、テクニック……もちろんそれも大事だが、サッカーが対人競技である限り、騙しあいもその重要な一部分なのだ。

キックフェイントで有利な状況を。

 浦和戦のゴールは素晴らしかった。だが私がだまされたのは、このプレーではない。79分のプレーである。

 私がソウザを見ていて、キック以外にも感心しているプレーがある。それはキックフェイントを多用するところだ。

 彼は右足でボールを蹴るとき、キックフェイントをよく織り交ぜる。近くに敵がいるときは、ほぼ必ず。

 キックだけでなく、中盤から攻め上がるときも蹴る素振りを見せながらボールを進める。Jリーグでいちばんキックフェイントを使っている選手かもしれない。

 ソウザはキックフェイントを多用して、自分に有利な状況を作り出す。

 守る側の選手は、目の前で蹴る素振りを見せられると反射的に動きが止まるものだ。足は出してもボールを怖がって上半身を反らせたり、ついつい目線を切ってしまう。つまり、相手のプレーへの反応が遅れる。

 これはボールを持つソウザにとって、パスコースが広がり、ドリブルで抜き去るチャンスが生まれることを意味する。

サイドチェンジかと思いきやタテパス。

 そんなソウザのキックフェイントが威力を発揮したのが、79分のプレーだった。敵陣でパスをもらった彼は顔を上げ、左手を広げて、大きく右足を振り上げた。私は右サイドに大きくサイドチェンジするのだろうと思った。

 だが、だまされた。ソウザは大きく振り上げた右足の軌道を微妙に変えて、柏木と青木の間にグラウンダーのタテパスを通したのだ。

 私は思わず、「おおおおお……」と唸った。

 ソウザはサイドチェンジをすると見せかけ、目の前の柏木を少し右に動かし、これによってできたわずかな隙間にパスを通した。結果的にフィニッシュには結びつかなかったが、ゴールへの最短距離を突くという意味で、敵にもっともダメージを与えるパスだった。

【次ページ】 ロナウジーニョも楽しく“だます”。

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