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観客の願望を叶えるC大阪ソウザ。
名手は敵もファンも見事に「騙す」。
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byGetty Images
posted2018/09/07 10:30
パワー、スピード、テクニック……もちろんそれも大事だが、サッカーが対人競技である限り、騙しあいもその重要な一部分なのだ。
ロナウジーニョも楽しく“だます”。
ファンや記者はピッチを俯瞰して、勝手に期待をふくらませる。
「ここにパスを出してくれたら」「ここで決めてくれ!」
だが、現実は思うようにいかないものだ。ピッチでは四方八方から敵が襲いかかってきて、視野を確保するのも難しい。そうした中でファンの期待に応えるのは難しい。
だが一流になるとファンの期待に応えるだけでは飽き足らず、ファンをだまして、その上で喜ばせる。
真っ先に思い浮かぶのがロナウジーニョだ。
ロナウジーニョはちょっとしたパスを出すときに、よく明後日の方向を向いたものだ。あるゲームでは、それがあまりにも多く気がつけばこちらも慣れてしまった。すると彼はそんな思いを見透かしたように(そんなわけないけれど)、近くにいたイニエスタに普通にパスを出した。これには一周まわって驚かされた。ロナウジーニョくらいの名人になると、普通のプレーでも観客はだまされてしまう。
観客席で思わず唸ったソウザのタテパス。こんなプレーが増えるほど、Jリーグは面白くなるのだが。