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アジア大会銀獲得の女子ビーチペア。
結成4年目コンビが紡いだ信頼感。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byAFLO
posted2018/09/04 11:00
女子ビーチバレー日本勢では12年ぶりの銀メダル。東京五輪に開催国枠を使わずに出場できる可能性も残す強豪ペアだ。
時間差でこみ上げてきた悔しさ。
ネットに近い場所で跳ぶと、視野が狭まり目の前の相手も見えにくくなる。ネットから数十センチ離れることで視界が開け、相手スパイカーが打ってくるコースに手を出せるようになった。ビーチバレーボール競技には監督が存在しない。試合中はコーチも介入できないため、ペアが2人で考え、意見を出し合い、対応していかなければならない。その対応力が石井・村上の最大の強みだろう。
それだけに悔しさも残ると2人は言う。
「大会に入る前から、優勝を目指すと言っていましたし、あそこまで行ったら、やっぱり金メダルが欲しかったですね」
村上がそう言うと石井も苦笑する。
「わたしは試合が終わって、ちょっと冷静になって、決勝戦の動画を見直していたときに悔しさがこみ上げてきました。2セット目、点数は離されていたんですけど『ここという場面で点が取れていたら勝てたな』って思える箇所がたくさんありましたから。
後半、徐々に追いついていけたので、取りたいところで確実に点を取れなかったのが痛かったです」(石井)
4年間ペアを組み続けたことのメリット。
石井と村上はペアを組んで4年目となる。頻繁にペアのチェンジが行われるビーチ界において、4年という長い歳月をともにしているだけあり、ペアにとって最も大切なコミュニケーション力を備えていると言えるだろう。
「相手のおかげで引き出されている長所は、全部ですかね。性格もプレーもすべてです。わたしの性格はのんびりしていて、あまり勝負師みたいなところがないので、バランスがいい。性格的に正反対な部分があるからこそ、チームが強くなると思う」(村上)
何でも臆することなく口に出す石井を指して、村上はこう続けた。
「これだけ長い間、ペアを組んで一緒にいると自分の弱い部分は出るし、見えてきます。わたしはあまり自分の考えていることを言わないほうだったけれど、美樹ちゃんにははっきりと言う努力をしています」
時には腹の中を見せ合い、本音で話す。風の影響や天候など、コートの上でたびたび状況が変わるビーチバレーの特性を考えると、その中で戦術を遂行したり、精神的に支え合うためには、ペアの信頼関係は大きく勝敗にかかわってくる。