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代表選手を魅了するドリブル理論。
岡部将和がサッカーに革命を起こす。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byShinya Kizaki
posted2018/09/01 08:00
岡部将和氏は大学まではサッカーに打ち込み、その後フットサルを経てドリブルデザイナーとなった。
骨盤、脊髄反射、膝の角度まで理論がある。
こうやって代表選手に指導しながら、岡部は研究の歩みを止めていない。この1年で特に進化したのが、人体メカニズムの利用だ。
「僕は普段猫背なんですけど、相手と対峙してドリブルの間合いに入ると、すっと背中が立つんですね。最初はそれに自分でも気づいていなかった。
でも、自分より能力が高い選手を指導するようになってから、『ボールをどこで触るとどう転がっていくから』といった話をしても、同じ動きにならなかったりする。
なんでかなと考えたら、体が連動していないからだと気づいた。足だけはそこに当たるんだけど、体全体が連動していない。それで体の使い方も気になるようになったんです」
プロでもドリブルをするときに猫背になって、骨盤が後ろに倒れてしまう選手が多い。そういう選手に対して、岡部はしっかり骨盤を立てるようにアドバイスする。足がどの方向にもスムーズに踏み出せるようになるからだ。
「さらに動きを早めるために、最近では生理学の知識も取り入れています。人間には伸張反射という能力が備わっているんですね。脊髄反射の一種で、脳が指令を出す前に、これ以上筋肉が伸びたら切れちゃうとなって縮まる機能です。
この伸張反射を、動き出しに利用する。ふくらはぎを伸ばすことで縮ませて、走るエネルギーにするんです。そのためには膝が外に開いちゃいけない、足を伸ばすときの膝の角度は176度がいい、内側の筋肉を使う、といった基本がある。ネイマールやアザールは見事にこれを使っています」
メッシが使う「膝を抜く動き」。
また、横隔膜の機能も活用し始めた。
「大きく呼吸をすることで、胸郭を上にあげて、落とすと、下への力が発生する。そのエネルギーを使って、伸張反射へつなげる。そうすると、踏ん張らなくてもすっと出られます。ちなみにメッシは膝を抜く動きで、これを実現している。一瞬膝を浮かして落とし、上から下へ降りるエネルギーを力として使っています」
岡部のドリブル理論は動画を通して海外からも注目を集めており、本格的な世界進出が見えてきた。元バルセロナのガイ・アスリンに指導したところ、「バルサのカンテラでも教えられなかった」と太鼓判がおされた。