マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
藤原恭大と根尾昂のライバル性。
「自分が打つと、藤原は燃える」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/08/26 11:30
「他校なら4番」クラスの選手が揃う大阪桐蔭でも、藤原恭大と根尾昂の2人の存在感は図抜けていた。
決勝戦、吉田輝星のスライダーを。
そして極めつけは決勝戦、あの「金足農業」との一戦だった。
前日まで「甲子園749球」の鉄腕・吉田輝星も、さすがに下半身の“バテ”がはっきり見えていた。
踏み込んだ左足の踏ん張りが利かない。リリースの一瞬バランスを崩し、ボール、ストライクがはっきりとしていた。
「鉄腕」に限界が訪れていた。
6-1と大阪桐蔭がリードを広げた5回だ。
先頭バッターとして打席に立った藤原恭大が、吉田輝星のタテのスライダーがまん中低め、絶妙な高さに落ち込んでくるところを、右手一本で拾って、ライト前に運んでみせた。
コイツはこれができるんだ……。
広角にどこへでも放り込んでしまうスイングスピードに、あっという間に二塁から三塁まで蹴ってランニング弾にできる快足。それも藤原なら、この「とっさ力」。これこそ、彼のずば抜けた能力を象徴する特質なのだ。
どんなにタイミングを崩されても。
思い出したのは、この5月。
大阪桐蔭が大学生に胸を借りた日本体育大学とのオープン戦だ。
前日、兵庫・明石での近畿大会に出場した大阪桐蔭は、その足で夜通し大型バスで東に向かい、その朝には、横浜市の日体大グラウンドにやって来ていた。
試合中盤、打席に立った藤原恭大は、やはり同じようなタテの変化球にタイミングを崩されながら、同じように右手一本で、ライトポールの右に、あわや……の放物線を描いていた。
高校生なら普通は空振り、せいぜいファール。そこまでタイミングを外されながら、あわやホームラン!? の打球にまでしてみせる。
それが、藤原のバッティングの真骨頂なのでは。タイミングは崩されても、体勢は崩されない。スイングの軸だけは崩れない。そこだな……。