マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
藤原恭大と根尾昂のライバル性。
「自分が打つと、藤原は燃える」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/08/26 11:30
「他校なら4番」クラスの選手が揃う大阪桐蔭でも、藤原恭大と根尾昂の2人の存在感は図抜けていた。
根尾が難しいことをすれば、藤原はさらに。
2戦目の沖学園戦では、もっとわかりやすいかたちで、「根尾・藤原」のせめぎ合いが。
7-3とリードした7回、根尾昂の弾丸ライナーがバックスクリーンに突き刺さった。高校通算28弾、それが「甲子園1号」と聞いて驚いた。
まだ打ってなかったのか……てっきり、もう2、3本ぐらい放り込んでいるんだろうと思い込んでいた。
そして、次の回にまわってきた藤原恭大の打席だ。
藤原は、間違いなく“レフト”を狙っていた。
根尾がバックスクリーン弾なら、オレはもっと難しいことをしてやろう。思いきり踏み込んだスイングから左中間の深い所に飛び込んだ一弾は、なんと、初球を振り抜いたものだった。
間違いなく闘っている。
根尾は藤原と、藤原は根尾と、相手チームと戦うのと同時に、この2人は間違いなく闘っていた。
「自分が打つと、必ず藤原は燃える」
さらに、浦和学院との準々決勝でのふたりの闘いは、もっと壮絶だった。
2回、まず根尾昂が浦和学院の逸材右腕・渡辺勇太朗が投じたまん中高めの140キロを、左中間のいちばん深い所に低い弾道で持っていくと、藤原恭大の負けじ魂の導火線に火がついた。
5回、ライトスタンドに藤原のライナーが飛び込む。
浦和学院・渡辺が立て続けに攻め立ててきた145キロ前後の内角速球。死球スレスレの絶妙なコース。高校生ならバットに当てるのがやっとのはず。そこをヒットじゃない、ひと振りでライナー弾にしてホームインしたその瞬間、根尾は藤原に何か言葉をかけたが、藤原は目も合わせなかった。
「前で自分が打つと、必ず藤原は燃える。狙ってきますから」
試合の後、ちょっと困ったような顔をして、根尾が証言していた。
「2本目がすごかった。センターライナーかと思った打球が、あっさりオーバーフェンスですから……」