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池江璃花子、アジア大会で新次元。
疲労の中で勝ちきる感覚をモノに。 

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田坂友暁

田坂友暁Tomoaki Tasaka

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photograph byAFLO

posted2018/08/22 18:00

池江璃花子、アジア大会で新次元。疲労の中で勝ちきる感覚をモノに。<Number Web> photograph by AFLO

直前のパンパシでは4日間で8種目に出場。今大会も6日間で8種目に出場する池江。

自己ベストに近いタイムが出せた。

 大会2日目には、50mバタフライのメダルセレモニーが終了した直後、そのまま招集所に直行。100m自由形のレースをこなし、両方で金メダルを獲得したほどだ。

 それほどのタフな日程にも弱音を吐かない池江だが、3日目は「もう身体が動かないところまできている」と吐露するほど疲れが露わだった。しかし午後の決勝では56秒30と、自己ベストに0秒22にまで迫る記録をマークして優勝したのだ。さらにその約40分後には、4×200mリレーの第2泳者として泳ぎ、銀メダルを獲得した。

「予選が終わったあと、大会記録(56秒61)の更新すら難しいんじゃないか、というくらい疲れが溜まっていました。だからバタフライは、56秒5を出せたらいいな、くらいに思っていました。

 そういう中でも、56秒3というタイムが出せたことは良かったですし、最近はどんな状況でもコンスタントに56秒前半のタイムを出せている。なので、自分のレベルが上がってきていると実感しています」

 それはもちろん、自由形にも同じことが言える。2日目の100m自由形の優勝タイムは53秒27と、自己ベストから遅れたのは0秒24だけだった。

勝ちきるという大きな経験値。

 今大会では、池江にとって水泳人生最大の目標である「自己ベスト」の更新こそ難しいかもしれない。しかし、池江のコメントにあるように、身体に疲れが溜まり、ベストコンディションでなくとも自己ベストに近い記録を出して「勝ちきる」ことは、何よりも大きく成長させる経験となるだろう。

 振り返れば、かつて世界と戦い続けた北島康介や山本貴司、松田丈志、中村礼子らは、自分がどんなコンディションであれ、国内外問わず主要大会であれば必ず“ある程度”の結果を残した。それはメダル獲得云々ではなく、自己ベストに近い記録を出し続けてきたということだ。

 どんなに悪い状態でも記録を出せていれば、調子が万全なら良い記録が出せる自信が生まれる。やってきた練習も間違いではなかったと、確信できる。少しずつ、そうした自信を積み重ねていくことで、最も大きな目標に向かう準備をしていくのである。

【次ページ】 一歩ステップアップになったかな。

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