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カープの“下位打線”は甘くない。
野間、會澤、西川が果たす役割。 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byKyodo News

posted2018/08/19 11:00

カープの“下位打線”は甘くない。野間、會澤、西川が果たす役割。<Number Web> photograph by Kyodo News

2位をつきはなしてセ・リーグ最強の得点力を誇る広島打線。下位まで途切れず、一発もある。リーグ3連覇が見えてきた。

「隙あらば、野間」の評価を自力で変えた。

 シーズン終盤、主に野間峻祥、會澤翼、西川龍馬が下位打線を構成する。

 特に今季急成長を見せる野間は、広島を象徴する選手と言えるだろう。シーズン序盤の鈴木や丸の離脱、バティスタの不振もあって、巡ってきた出場機会を見事に生かした。

 走力と守備力はチーム随一。課題とされていた打力で、多くの実戦打席を重ね、結果を残したことで開眼した。

 7月22日には、前日21日の試合で外野の守備で左足を痛めたことで選手登録を抹消されたが、“穴”を感じさせた。それこそ野間の成長、と東出輝裕打撃コーチは認める。

「“野間がいればな”と思わせることができたのは野間の成長。昨年、離脱しても野間が……とはならなかったはず。足もあるし、守りもいい。(スタメンを組むときに)迷ったときは野間で行けるから。やっぱりいたら大きいよね」。

 入団1年目に多くの出場機会を与えられたことで、ネット上で「隙あらば、野間」と揶揄されたこともあったが、今季は「困ったら、野間」に変わった。いや、野間自身が変えた。

 そして再登録2日目にスタメン復帰すると、4試合連続安打を記録した。選手登録抹消までの活躍がフロックではなかったことを示すとともに、まだまだ先にある完成型を感じさせるプレーを続ける。

「天才」西川も大不振から華麗に復活。

 一気に花を開かせた野間に対し、三塁の定位置をつかんだ西川は今季、どん底からはい上がった。

 シーズン序盤、「(野球人生の中で)記憶にない」ほどの大不振に陥った。安部友裕と争った三塁の定位置どころか、一軍にすら居場所がなくなった。5月2日、二軍に降格となった。

 経験のないスランプだったからこそ、思い切れた。軸足である左足に重心を残して振り出す形を変えた。左足から右足、左足へとリズム良く重心を移動させながら振り出すように修正。精神的なリフレッシュもあった。

 再昇格後は本来のムチのようにバットをしならせる打撃が戻った。降格時.118まで落ち込んでいた打率を3割台に乗せると、三塁で併用されていた安部が戦列を離脱したことで定位置を掴んだ。

 打撃センスは誰もが認めるところ。同学年の鈴木が3年遅れで入団した西川の打撃を初めて見たときに「天才」と危機感を募らせたほどだった。

 復調した西川にストライクゾーンの定義は当てはまらない。「打てると思ったら振る」とワンバウンドした低めの球にバットを立ててヒットゾーンに打ち返す曲打ちを見せれば、厳しいコースの内角球をフェアゾーンに打ち返すこともある。打撃技術はチームでもトップクラスなのだ。

【次ページ】 数少ない「打てる捕手」の貢献度も高い。

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