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甲子園に着いた学校が悩むこと。
昔は選手のケンカ、今は体重増加? 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byHideki Sugiyama

posted2018/08/17 07:00

甲子園に着いた学校が悩むこと。昔は選手のケンカ、今は体重増加?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

近年の高校球児たちは軒並み体格がいいが、その中には「甲子園に来てから数キロ増えた」選手も多いのかもしれない。

練習時間が短くて、ごちそうが出ると……。

 予選を勝ち上がって甲子園を決めた球児たちは、取るものも取りあえず、慌ただしく旅支度を整えると空路、陸路、学校によっては海路、関西にやって来て、指定された宿泊先に入り、旅装を解く。

 そこから先は、「大会期間中」という扱いになって、勝手な行動はできないと聞いている。

 練習は原則2時間、指定されたグラウンドで行う。前後にミーティングがあり、その中でわりと長い時間をかけて試合に備えた「座学」があり、対戦する相手チームの研究などに当てられる。

 基本的に、それ以外の時間は「自由時間」となり、休養するなり、仲間たちとの談笑に興じるなり、少なくとも、普段の学校がある時期の「野球部生活」に比べると、ストレスの少ない時間の経過になるようだ。

 物理的なエネルギー消費が少ないわりに、食事は3度3度、宿泊先が工夫をこらした「ごちそう」が振る舞われる。

 宿泊先がホテルの場合は、朝食、夕食がバイキング形式。旅館の場合は、料理の品数の多い定食形式のことが多いと聞いているが、「さあ、どんどん召し上がれ!」と、食べ盛りの選手たちがお腹いっぱいになるように、ご飯もおかずもふんだんに用意される。

 選手たちはというと、ほどよい運動と十分な休養で食欲のかたまりと化し、さらに食べることぐらいしか「楽しみ」のない生活のせいで、ストレス食いのような状態にもなっていて、まあ、食べること、食べること。

「見ているこっちが、気持ち悪くなるぐらい食べますから」

 部長先生から泣きが入るほどの勢いで、片っぱしから食べまくる。

「普段“食育”とか言いながらたくさん食べることを奨励している手前、肝心の甲子園に来て、そんなに食うなとも言えませんからねぇ……」

 結果、試合の日までに何日もあったりすると、ユニフォームのサイズを急遽LからXLに上げねばならない選手が何人も現れて、出入りの運動具屋さんをあわてさせたりもするそうだ。

体重が増えて体のキレがなくなることも。

「困るのは、太ってしまって、プレーに悪影響を及ぼすことなんです。ピッチャーは、重い荷物背負って投げてるようなものですから、後半のスタミナがなくなってくる。体のキレがなくなるから、スコアボードに出るスピードの数字は同じでも、“棒球”になって持っていかれてしまう。

 前にあったんですよ、本当に。50m5秒台で走る1番バッターを走らせたら、ベースの1メートルも手前で刺されてしまった。ええっ! と思ってほかの選手に聞いたら、あいつ、3キロぐらい増えてるそうです……だって。気づかなかったこっちも悪いんですが……」

 甲子園のグラウンドで、ユニフォームを内側から圧するほどの肉体美に、最近の高校生は体格がよくなったなぁ…などと感心している裏には、こんな事情があった。

【次ページ】 「最近の子はおとなしいもんです」

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