マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
甲子園に着いた学校が悩むこと。
昔は選手のケンカ、今は体重増加?
posted2018/08/17 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
甲子園大会では、試合開始予定時刻の2時間前に「試合前取材」という囲み取材の時間がある。
一塁側、三塁側、それぞれアルプススタンド下に室内練習場があり、そこに次の試合の出場校の監督、部長、ベンチ入り選手たちが居並んで報道陣を待つ。
記者たちは思い思いに、お目当ての“取材先”を取り囲んで、質問を浴びせることになる。いただける時間は、わずか10分である。
あるチームの試合前取材でエースピッチャーを近くで見たら、以前より姿がすごく大きくなったように感じた。
少なくとも、地方予選の決勝戦までは、骨がユニフォームを着ているように(失礼!)見えていたのが、甲子園の室内で記者たちに囲まれている彼は、骨を程よく筋肉だか脂肪だかが覆って、ユニフォームがぴったり似合う体型になっていた。
「こいつ、こっち来てから4キロぐらい太ったんですよ」
教えてくれた野球部長先生の笑いが苦々しかったから、ああ、あれかな……と思い当たることがあった。
昔は心配といえばケンカだったが。
「甲子園に来て、何がいちばん頭が痛いかって、選手たちの体重管理。これがいちばんですよ。昔は、もっと違うことのほうを心配してたんですけどね」
ちなみに昔の心配のタネは、選手たちの「大阪探訪」だったそうだ。
自由時間にスッと宿舎を抜け出して、珍しい大阪の街に迷い込む。ふらついてくるだけならまだいいが、時には“いけないお店”に引っ掛かってしまったり、地元の悪いのに難癖つけられてケンカになって逆にのして帰ってきたり。
あとで問題になったら大変だから、面が割れているかもしれないその選手は、レギュラーなのに結局試合に出せなかった……なんて笑えない話もあったという。
「体重のことだから、そこまでおっかない話じゃないと思うでしょ。でも、全員にかかわることだから、ある意味そういう“事件”よりもっと私たちにとっては怖いんです」