甲子園の風BACK NUMBER
甲子園で「1-0」が絶滅寸前?
過去にはダルビッシュや王さんも。
text by
田澤健一郎Kenichiro Tazawa
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/08/18 07:00
甲子園が「打撃有利」に傾いた後の2003年、最高の「1-0」を演出した東北のダルビッシュ有。
本格派と技巧派の投手戦に勝利したのは?
対照的な投手による「1-0」なら1992年の2回戦・県岐阜商vs.熊本工も忘れがたい。
1回1死からリリーフした熊本工のエース・坂田正樹は最速145キロを記録した評判の本格派右腕。一方、9回1死まで投げた県岐阜商の先発、右サイドスロー・高橋雅巳は春までチームの打撃投手的な存在。
制球力を買われてその年から1枠増えた岐阜大会の夏のベンチ入りメンバーに滑り込み、好投して主力投手にのし上がった。剛球でゼロに抑える坂田に対し、コントロールと緩急でゼロ行進を続ける高橋。試合は9回裏にサヨナラスクイズを決めた県岐阜商が「1-0」で勝利。
「投手はスピードだけではない」と見せつけた一戦であるとともに、大会後、全日本高校選抜メンバーにも選ばれ、最終的に社会人野球までプレーした高橋のシンデレラストーリーが印象的だった。蛇足ながら県岐阜商は、次の3回戦・東邦戦も高橋が先発して好投するも、逆に「0-1」で敗れている。
ちなみに今年はまだゼロ。
その他にも延長10回裏、境のエース・安部伸一が許した初安打がサヨナラ本塁打となって敗戦した1984年の1回戦・法政一vs.境、ともに後のドラフト1位投手、津久見・川崎憲次郎と大垣商・篠田淳が投げ合って川崎が投げ勝った1988年の3回戦・津久見vs.大垣商など、「1-0」は名勝負の宝庫である。
さて、今年の夏の甲子園だが、ベスト16が揃った8月15日の時点で「1-0」の試合はゼロ。完封試合は8試合と多いが、やはり両者が好投というのはなかなか難しい。ファンの記憶に強く残っている試合も、タイブレークで逆転サヨナラ本塁打が飛び出した済美vs.星稜戦など、点の取り合いとなったゲームが多いのではないだろうか。