甲子園の風BACK NUMBER
甲子園で「1-0」が絶滅寸前?
過去にはダルビッシュや王さんも。
posted2018/08/18 07:00
text by
田澤健一郎Kenichiro Tazawa
photograph by
Hideki Sugiyama
最高の投手戦とはどんな試合か? スコアだけ考えれば、それは「1-0」だろう。高校野球の歴史でも、たくさんの好投手たちが「1-0」のゲームを演出してきた。息詰まる展開に「いつ点が入るのだろうか」と固唾をのんで見守る緊張感は、投手戦好きの醍醐味である。
だが、近年の夏の甲子園では「1-0」のゲームを、あまり目にしなくなった気がする。そこで過去の「1対0」の試合を調べてみると、昨年の99回大会までで全178試合。1大会あたりに換算すると1.8試合。さらに81回大会以降に絞ってみると1大会あたり0.9試合と半減する結果となった。
もともと、そうそう見られるスコアではなかったが、近年は1大会で1試合あるかないか。1県1代表制以前の試合数の少なさも加味すれば、いかに希少かがわかる。
馬淵監督「打てないと勝てない」
81回大会以降、つまり1999年以降に絞った理由は、今年の夏の甲子園を入れれば20年、20大会分になるというきりの良さがひとつ。
ただ、それ以上に1997年に智弁和歌山が大会チーム最高打率を12年ぶりに更新して優勝、3年後にはその記録を自ら更新して2度目の優勝を果たし、合計安打、合計本塁打などの記録も更新した時期とも重なるからだ。
ちなみに通算チーム打率は、そのわずか1年後、日大三が記録を更新。さらに現在は2004年に優勝した駒大苫小牧が記録を保持している。
最近の高校野球は「打撃を磨かないと勝てない」といった声が聞かれる。実際、過去に比べ打撃重視の傾向が強くなり、レベルも向上しているといわれる。2017年の選抜でも、清宮幸太郎が主軸を打つ早実に敗れた明徳義塾の馬淵史郎監督が「今は春も打てないと勝てない」という敗戦コメントを残したのが印象的であった。
81回大会前後は、こうした打撃重視の傾向が顕著になり始めた時期であり、逆説的に「1-0」の試合が減少し始めた時期になるのではないか、と仮説を立てたのだ。参考までに金属バットが導入された1974年の56回大会以降に絞った数字は1.7試合と全大会の平均値とほぼ変わらない。
少なくとも「1-0」がこの20年で減少していることは間違いないようだ。こうした時代に、両チームの投手がほぼ全てのイニングを0点に抑える必要がある「1-0」が、単なる完封ゲームよりも希少なのは明白だ。