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「大井の帝王」的場文男の伝説。
愛され続け61歳で地方最多7152勝。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKyodo News
posted2018/08/16 11:20
45年もの間、馬にまたがり続けて操ってきた的場文男。その積み重ねが7152勝という境地にたどり着いた。
年下でもアンカツさん、武豊さん。
4歳下の安藤勝己や、ひと回り以上若い武豊について三人称で話すときも「アンカツさん」「武豊さん」と敬称をつける。
開催のない日に検量室でインタビューしていたとき、次に取材を受ける別の媒体の記者が来ると、「せっかくだから、みんなで一緒に話そうよ」と財布を出して自販機のコーヒーを全員にふるまってくれた。
怖そうなのに優しく、頑固そうなのに柔軟で、豪快でありながら細やかに気を使う。
こういうキャラクターだから、騎手仲間からも、厩舎関係者からも、主催者からも、マスコミからも、そしてもちろんファンからも、徹底的に愛されている。
的場文男は、誰にも似ていない、唯一無二の存在なのである。
37戦未勝利、東京ダービー制覇を。
モットーは「努力、根性、一生懸命」。5000勝や6000勝などの節目や、今回の最多勝記録更新といった明確な目標があったから、いくつになっても高いモチベーションを維持できたのだという。
「自分が日本一になったら、次は何を目標にしたらいいのかな」と笑っていた彼は、ひと鞍乗るたびに最多騎乗記録を、ひと鞍勝つたびに最多勝記録を更新することになる。彼の最多勝記録は、おそらく不滅になる。今後、彼を上回るペースで勝つような天才騎手が現れたとしても、内田博幸や戸崎圭太がそうだったように、途中でJRAに移籍して、勝ち鞍が少なくなると思われるからだ。
自身がすべての騎手の先頭を走るようになった今、何を見据えているのか。
「最も勝ちたいレース」と公言しながら、37回騎乗して未勝利、2着が10回もある東京ダービーの制覇も、当然目標になるだろう。
「先は短いかもしれませんが、ひとつひとつ大事に乗っていきます」
いつごろ引退するかも、引退後に何をするかも、まったく考えたことがないという。
生涯一騎手の的場文男の伝説は、これからもつづく。