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騎手22年目・秋山真一郎の忠実さ。
武豊の美しいフォームのように。
posted2018/08/10 07:00
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph by
Photostud
短距離戦とは思えないくらい引っ張ったままで先行勢をマークする。
「なぜかずっとよい手応えでした」
追われるとアッと言う間に前を捉えた。2着につけた差は1と4分の1馬身。電撃の1000m戦である事を考慮すれば圧倒的な差と言っても過言ではない数字だ。
「はい。完勝でした」
そう答えるのは、7月29日に行われたアイビスサマーダッシュの勝ち馬であるダイメイプリンセスの手綱をとった秋山真一郎騎手である。
1979年2月9日、滋賀県の生まれ。父の忠一氏は元騎手で、その後、調教助手となった人物。
「騎手を意識したのは、幼稚園に入るかどうかという頃でした」
幼い頃から父の姿を見て憧れた。小学校、中学校とその目標がブレる事はなく、'94年にはJRA競馬学校に入学。3年後、無事に学校を卒業すると、栗東・野村彰彦厩舎から念願の騎手デビューを果たした。
師匠からお尻をドシンと着くな、と。
当時、師匠の野村調教師に言われた事があったと言う。
「鞍にお尻をドシンと着くような跨り方はするな」
頭の中に常にその言葉を入れて騎乗するよう心掛けた。
初勝利はデビューした翌週。その後も順調に勝ち星を増やし、1年目は33勝。2年目はさらにそれを上回る37勝。しかも、その勝ち星の中には、カネトシガバナーを駆っての神戸新聞杯(GII)もあった。デビュー2年目で初の重賞制覇。その早さに周囲は称賛の声を挙げた。
しかし、当の本人は小首を傾げて言った。
「自分としては決して早いとは思いませんでした。むしろ時間がかかったとすら考えていました」
デビューから2年目という数字は確かに早いだろう。しかし、秋山騎手がこの世界を目指したのは、先述した通り、幼稚園に入るかどうかという頃。そこからの"想い"があったから、本人には長い時間と感じられたのだろう。