ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
山根会長時代に起こったある事件。
井上尚弥を生んだU-15大会が消滅。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byKyodo News
posted2018/08/11 11:00
山根明前会長をめぐる騒ぎで評判を落とした日本ボクシング連盟。ジュニア世代でも問題が起きている。
インターハイなどにも出られない。
しかし、こうした現場の努力も空しく、ついに昨年、アマがU-15を拒絶する通知を発表したのは冒頭に書いた通り。その理由は定かではないが、子どもたちにとっては最悪の事態にいたったと言えるだろう。
この通知がジュニア選手、関係者に与えたショックには、もう1つ大きな理由があった。もしU-15に出場した場合、UJに出られないだけでなく、将来的にインターハイなどすべてのアマチュアの大会に出場できなくなる、という懸念である。
アマチュア規則の適用基準では「選手や役員がプロの興行の試合参加はもちろん、前座の試合等に参加する事を禁止しています」と明言している。
前述の通り、U-15を“プロの興行”とみなせば、ルールを厳格に適用するとU-15への出場はアウトで、その時点でアマチュア資格は失う。「それはひどい」という訴えに対し、アマ側は「いや、ルールですから」と答えるというわけだ。
U-15に出場した選手が、高校に入ってインターハイの予選にさえ出場できなかったらたまらない。仮にU-15に出場したくとも、子どもの将来を考えれば、親は出場をやめさせるだろう。まさにアマの“U-15つぶし”というほかない。
プロ側はやむなく別大会を立ち上げ。
プロ側はやむなく'18年のU-15開催を断念した。かわって将来のプロ希望者のみを対象とした「ジュニア・チャンピオンリーグ」の立ち上げを発表した。
この大会の出場者を募集するにあたっては、プロ側は「もしこの大会に出場したら、高校生になってインターハイに出られないかもしれない。それを承知した上で出てください」と念を押すようにしている。それほどアマ側の出方に神経をとがらせているというわけだ。
正直なところ、小学生の段階で将来プロを目指すのか、オリンピックを目指すのかを判断させるのは酷だし、そもそも判断しようがない。それに、オリンピックを目指したり、プロ入りしたり、というところまでいく選手はごく一部。まずは裾野を広げることが大事であることは言うまでもない。