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「アマボクシングに命懸けとる」
山根明の書かれざる素顔。
posted2018/08/10 18:30
text by
前田衷Makoto Maeda
photograph by
Kyodo News
今やすっかり時の人となってしまった山根明・前日本ボクシング連盟会長。最初に取材してから30年以上にわたって長く接してきた中で、筆者なりに感じた彼の人物像を記しておきたい。
「俺はアマチュアボクシングに命懸けとる」
「法人のために体張って生きてきたからな」
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これまで山根明氏の口からこんな言葉を何度聞かされてきたことだろう。
法人とは「一般社団法人日本ボクシング連盟」のことである。「命懸けとる」とはなんと大げさな、なんと物騒なと思われるかもしれないが、本人は大真面目で、山根氏の半生、特に後半、ボクシングに関わるようになってからは、まさに命懸けで日本アマチュアボクシングのために戦ってきた。その挙句が「会長辞任」。
AIBA(国際ボクシング協会)の理事として8年間活動する中で、押しの強さと独特のキャラで国際的に顔を売った。この間、「ジュリー(審判委員)」として参加したアジア圏の国際大会では、日本代表選手に下された敗北の判定が不当だとして猛烈に抗議し、判定を覆させたこともあった。
とんでもないワルの印象だが。
週刊文春は最新号(8月16・23日号)で、「山根明『悪の履歴書』」と掲げて特集を組んだ。他のメディアの記事タイトルにも「悪行」「マル暴交際」の文字が躍っている。山根氏を知らない人はやくざの親分のようなこわもての風貌と重ねて、とんでもないワルとの印象を受けたかもしれない。
しかし私がこれまで取材で接してきた山根氏の印象は異なる。
「俺は曲がったことなどひとつもしとらん」と言うのが口癖だった。
実際、そう信じて生きてきたことは間違いない。