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『空の拳(上)(下)』読者の“幻想”を裏切る展開で、ボクシングの本質が露わに。 

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中村航

中村航Kou Nakamura

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posted2018/08/15 07:00

『空の拳(上)(下)』読者の“幻想”を裏切る展開で、ボクシングの本質が露わに。<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

『空の拳(上)(下)』角田光代著 文春文庫 各610円+税

 空をつかむようにまっすぐにのびる左アッパー、と作中にあるのだが、読んだとき、それを目撃した、と感じた。

 作中で描かれるボクシングは、華やかな世界戦などではなく、後楽園ホールがメインの舞台の昭和的で泥臭いボクシングだ。そしてそのボクシングは、試合実況や試合レポートの言葉ではなく、小説の言葉で、執拗に綴られていく。ざわざわとざわめく居酒屋の描写と地続きのように描かれるボクシングだからこそ、次第にその本質を露わにしていく。

 男なら拳だ、球だの棒だの使うんじゃない、身ひとつで勝負なんだよ

この記事は雑誌『Number』の掲載記事です。
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角田光代

ボクシングの前後のコラム

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