フランス・フットボール通信BACK NUMBER
W杯中のフランス代表の日常生活。
メディア戦争、金、そして家族愛。
posted2018/07/29 08:00
text by
フランソワ・ベルドネFrancois Verdenet
photograph by
Pierre Lahalle
フランスの優勝で幕を閉じたロシアW杯だが、『フランス・フットボール』誌が現地に派遣したのは記者ふたりに過ぎない。「レキップ社」全体(レキップ紙、レキップマガジン、レキップTV)では26人である。前回のブラジル大会に比べても、その数は減っている。
ふたりのうちフランソワ・ベルドネ記者はフランス代表担当で、代表がベースキャンプを置いたイストラに滞在して密着取材をおこなった。そしてその間の様々なトピックを、日記風取材メモの体裁でFF誌に掲載した。
ここで紹介するのは、『フランス・フットボール』誌7月3日発売号に掲載されたベルドネ記者のイストラレポートである。その生き生きとした筆致から、まるでその場に居合わせたような感覚に読者の皆さんも陥ることだろう。
監修:田村修一
フランスのメディアはちゃんと働いた。
グループリーグ突破を果たしながら、デンマーク戦後の記者会見でディディエ・デシャン監督は、その消極的な戦いぶりにメディアの集中砲火を浴びた。容赦のない質問攻撃に、ルジニキスタジアムの会見ルームで彼は怒りを露わにした。どうして引き分けに終わったのか。理由のひとつを彼はこう語った。
「当惑せざるを得ないのは、対戦相手が常に48時間前にわれわれのスタメンを把握しているのに対し、私がデンマークの先発メンバーを試合の1時間半まえにようやく知ったに過ぎないことだ」
彼の言葉はフランスのメディアが《情報を伝達する》という自分たちの仕事をしっかり行っていることの証明でもある。
彼らはさまざまな情報を追いかけ、試合のメンバー構成については前々日から紙面で伝えている。
その点でレキップ紙の遊撃隊は特に優秀であるといえる。
彼らのイストラでの使命は「取材禁止の壁を突き破ること」。練習場のグレボベッツスタジアムの警備がどれほど強固であろうと、特派員たちは小さな隙間を巧みに突破して、まるで忍者のように任務を遂行したのだった。
またの名を《サージェント(巡査部長)》とも呼ばれた彼ら『レキップ』紙の特派員は……ダングマルーでありデゴールであり、デモルやガジ、シオニス、ガルシアらであった。