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高校野球でMLB式の球数制限を導入?
神奈川の公立高が示したその可能性。

posted2018/07/27 07:00

 
高校野球でMLB式の球数制限を導入?神奈川の公立高が示したその可能性。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

高校野球とエースの熱投は切り離せないものだったが、時代は確実に流れていくのだ。

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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Hideki Sugiyama

 猛暑、酷暑、極暑……。

 ことしの夏は、例年以上に暑いというのが高校野球を取材して印象だ。「この暑さの中でプレーを続けていてはいつか死人が出るかもしれない」と何人かの取材仲間たちと話したものだが、埼玉県の熊谷市では気温が41度まで達したという。本当に気を付けなければいけない。プレイヤー、指導者、審判は相当、過酷だろうと思う。

 このうだるような暑さによる影響は、熱中症だけではない。このコラムでも訴え続けているが、投手の疲労、登板過多は、いよいよ死活問題といっていいだろう。

「正しい投球フォームで投げていれば、球数は関係ない」という持論を展開する指導者も中にはいるが、投球フォームの何が正しいかがまだ確定しない現状では、「正しいフォーム論」は当てにしない方が良いというのが筆者の考えだ。

 たとえ200球を投げても故障しない「究極の投球フォーム」がこの世に存在したとしても、この暑さの中で、すべての投球時においてその「究極のフォーム」が保たれるかははなはだ疑問だ。

「正しい投球フォーム」を追い求めることは大事だが、健康面に関しては、それよりも16歳から18歳までの年代で、どれだけの投球が許され、投球後にどれほどの投球間隔が必要なのか。投手を故障からどう守っていくかを考えた方が得策だろう。

 実際、目の前に「甲子園出場」がぶら下がっている中で、エースの登板機会が増えるのは避けられないし、日本高校野球連盟の規則があるわけでもない。高校球児の身の危険は常に隣り合わせにある。

球数制限を導入した県立高校。

 そんな現在の高校野球事情にあってこの夏、新しい風を吹かせたチームがある。

 北神奈川大会でベスト16に進んだ神奈川県立・市ケ尾である。特出した選手が集まってくるわけではなく、勉強も野球も一生懸命に取り組もうという気質の生徒たちがいる、ごくごく普通の公立校だ。

 市ケ尾がこの1年取り組んできたことの1つが「球数制限」である。

「市ケ尾Pitch Smart」と題された、同校投手陣が取り組む球数制限規則は、MLBと全米野球協会が規定したガイドライン「Pitch Smart」を参考につくられたものだ。

【次ページ】 MLBアカデミーを参考にルールを決定。

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