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史上最強・聖光学院が福島12年連覇。
転機は監督の「負けてみろ!」。
posted2018/07/26 10:30
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Genki Taguchi
100回目の夏。今年の福島を制したのは、またも聖光学院だった。
「やっぱり、今年も聖光か」
全国からそんな声が上がるのも容易に想像できる。戦後最長記録を更新する12連覇を遂げたのだから無理もない。
だがそれは、他者の見識であって、当事者の意識はまるで違う。毎年、この時期になると、斎藤智也監督のこの言葉が蘇る。
「みなさんが連覇、連覇と言ってくれるのはありがたいけど、うちはそこを目標に戦っていないから。俺と部長、コーチは連覇を経験できる。でも、ほとんどの選手たちにとって、甲子園を経験できるのは最後の3年の夏しかない。だから、『こいつらにいい思いをさせてやりたい』って想いが一番なんだよ。結果的に連覇をしているけど、各年代の選手の歩みがそこに繋がったことのほうが嬉しいね」
聖光学院にとって夏の福島の優勝は、いつだって「初」なのである。
「史上最強」の金看板とともに。
決勝で福島商を15-2の大差で下した試合後、斎藤監督はしみじみと話していた。
「試合中は、この子らの1年間の苦労を思い出しながら、感慨にふけったところがあったよね。このチームは結果を出し過ぎた代だし、歴代でもひたむきにやってきた。12連覇、15回目の夏の甲子園と言ってもね、この代にはこの代なりの歩みがあったから」
今年は例年になく、勝つことで学び、歩んできたチームだった。
昨年の秋。聖光学院は「史上最強」の金看板を背負わされてスタートを切った。
下級生で唯一、夏の甲子園を経験した矢吹栄希を中心とした打線には破壊力があり、投手陣もエースの衛藤慎也ら多彩な投手を揃えて粘り強く相手を抑えてきた。聖光学院としては初となる秋の東北大会優勝。明治神宮大会にも出場した実績は、他者評価からすれば「史上最強」と謳うに十分すぎる材料だった。