プレミアリーグの時間BACK NUMBER
イングランド躍進の陰にリンガード。
「今時の若造」が一転「賢者」へ。
posted2018/07/21 07:00
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
監督のガレス・サウスゲイトは4つ年下。チームの平均年齢26歳に至っては半分でしかない。そんなイングランド代表の4強入りをテレビ観戦しながら、自分も年を取ったものだと改めて思わされるW杯の夏となった。
もっとも、50歳を越えれば「オヤジ」を実感する瞬間は普段から多々ある。己の若かりし頃の愚行を棚に上げ、「まったく今時の若者ときたら」と言いたい自分に気付いた時がその1つだ。
趣味と実益を兼ねて眺めさせてもらっているプレミアリーグで、「今時の若い選手ときたら」という目で見ていた1人がいる。マンチェスター・ユナイテッドのユースで育ち、今夏、初のW杯代表入りを果たしたジェシー・リンガードだ。
SNSでうっかりする今時の若造が。
なぜ、彼を「今時の若い選手」と感じていたのか。
例えば、2年前のウェストハム戦前。マンUのチームバスはアップトン・パーク到着を目前にして、旧ホームでの最終戦を前に感情的になった相手ファンに襲われた。正門前の通りは大混雑で警察も動けない大混乱。筆者は、対面に並ぶ民家の前庭を仕切る塀を乗り越えながらスタジアムを目指したが、チームバスの窓ガラスが割れ、マンU一行の身を案じたりもしていた。
ところが、その後ソーシャルメディアに出回ったのは、少しの危機感も感じられない様子で、単におどけているリンガードの姿だった。
さらに今年2月、マンUのホームであるオールド・トラッフォードでは『ミュンヘンの悲劇』から60年の追悼式が行われた。
黙祷が捧げられた3分後、リンガードがツイッターで発信したのはコンピューターゲーム絡みの“つぶやき”。「今時の若造ときたら……」と呆れたのは、筆者だけではなく巷もだった。
だが、そのリンガードに対する認識は、ロシア大会を経て「今時の若手はなかなかやる」へと変わった。