テニスPRESSBACK NUMBER
ウィンブルドン4強は30歳超のみ。
30代の男盛りで選手はなぜ伸びる?
posted2018/07/17 17:50
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
Getty Images
ファミリーボックスにいるノバク・ジョコビッチの妻と愛息の姿がスクリーンに映し出された瞬間が、表彰式のハイライトだった。準優勝のケビン・アンダーソンも家族席に「僕の美しい妻」と呼びかけ、感謝を捧げた。男子シングルスの終盤戦は、さしずめ夫たちの大会となった。
これを、30代の男盛りの大会だった、と言い換えることもできる。
男子シングルスの4強は全員、30代だった。ジョン・イスナーが33歳、アンダーソンとラファエル・ナダルが32歳、ジョコビッチが31歳だ。テニス選手は28歳前後にピークを迎えると言われたが、36歳のロジャー・フェデラーも全盛期の輝きを取り戻しており、28歳ピーク説は修正の必要がありそうだ。
身体の鍛錬は当然、差がつくのはメンタル。
成長曲線の山が2年くらい後ろにずれたか、あるいはピーク以降の下降カーブが相当ゆるやかになったと見るべきかもしれない。
ウィンブルドンの公式サイトに載った、テニス記者の手になる記事は「トッププレーヤーがプロ意識を高め、献身的に取り組んでいる」ことが30代選手の活躍の背景にあるとしている。
確かに、体脂肪がほとんどないジョコビッチの体や、アスリートの究極であり肉体美の極致でもあるナダルの体を見れば、彼らがどれだけトレーニングに打ち込んでいるか手に取るように分かる。トレーニングの成果は見かけだけではないのは言わずもがなだ。
ただ、トレーニングそれ自体は今や特別なことではない。では、どこで差がつくのか。やはりマインドセットなのだと今大会で痛感した。
アンダーソンは決勝のあとでこう話した。
「自分の進歩の過程を見て、どんどんよくなっていると実感できることが大きい。チームの誰と話しても同じ見方なんだ。僕は小さな進歩を続けることが人生の助けになると考えている。
僕は今、こういう大会で勝つテニスができていると信じている。グランドスラムやマスターズシリーズで勝つことは大きな目標だが、にもかかわらず、1年前の僕に尋ねたら、今の僕のように自信を持って言いきることはできなかっただろう」