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オシム「サッカーの未来が分かる試合」
クロアチアvs.イングランドの重要性。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2018/07/09 11:50
オシムをして「チームの結束が固すぎるほど、まとまっている」と言わしめたクロアチア代表。政治的背景抜きに、この代表チームは語れない。
「チームの結束は、固すぎると言ってもいいほどだ」
――PK戦を別にしてもクロアチアは素晴らしかったです。
「それには理由があって、スポーツが政治を越えているからだ。スポーツの力が政治を上回る。そしてこのチームはすでに多くの経験を積んでいる。これまでに複数の大きな大会に参加し、それなりの実績を残してきた。
またチームの結束も固い。固すぎると言ってもいいほどだ。ビッグクラブに所属する選手たちがチームを構成し、嫉妬も反目も彼らにはない。
チーム内に何の問題もないのは、監督がそういう選手たちを選んだからだ。グループの調和を保ち、固い結束で最後まで行きつける選手たちだ」
「イングランドは常にイングランドだ」
――だから誰が相手でも力を発揮できる。
「勝ち進んだことで、周囲の期待も以前よりずっと大きくなったが、チームの中では誰も大言壮語はしない。すべてが良くコントロールされ、チームはとてもバランスが取れている。特筆すべきは、ベンチの控え選手たちも充実していることだ。彼らもまたビッグクラブで経験を積んでいるから、交代の際にも的確な選択ができるし、最も適した選手が問題を解決することができる。
前線のクラマリッチとコバチッチ。その後ろにはラキティッチとモドリッチがいる。彼らはあまりプレッシャーを感じることなくプレーしている。そこが素晴らしい。彼らが言うように、最後まで行けるかどうか注目したい」
――次のイングランド戦ですが……。
「イングランドは常にイングランドだ。そう変わるものではない。日本がアジアでそうであるように、彼らはヨーロッパで常にトップの位置にいる。没することのないサッカー大国だ。彼らには経験のアドバンテージがある。サッカーの母国であり、彼らを凌駕するのは容易ではない。
私が疑問に感じるのは、前線に本当にクオリティの高い選手が揃っているのかということだ。かつてのボビー・チャールトンのような選手は今のチームにはいない。レベルは高いが、一度すべてをシャッフルし直した方がいいかも知れない。というのも国内には代表選手たちと同等の力を持った選手が数多く残っているからだ(笑)」